本の虫令嬢は幼馴染に夢中な婚約者に愛想を尽かす

初瀬 叶

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第36話

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図書館の前でサーフィス様と別れ、私は彼の背中を見送った。

サーフィス様にも過去に色々あった様だ。様々な思いを抱えていたのかもしれないが、貴族としてではなく、自分の好きな事を仕事にしてちゃんと自立している。そんな人が私だけじゃない事に勇気を貰った。

そう考えると、ちょっとワクワクしてきた。今まで灰色の結婚生活しかないのだと思っていた私の未来が、色付いていく感覚だ。
もうここまでくると結婚なんかせずに、自分にとって幸せだと思える未来を選び取る方が良いように思えてきた。
フェリックス様は、ステファニー様の側で生きていく事が出来る、私は自分の力で仕事をしてお金を貯めて世界を見て廻る。……うん!一石二鳥だ。
私は決意も新たに、図書館の扉を潜った。


「今日の授業も面白かった!!」
アマリリス様の明るい笑顔にホッとする。
今日はアマリリス様の家庭教師の日だ。
どんな風に工夫すれば、楽しく、分かりやすく歴史を伝える事が出来るのか考え抜いた成果が現れている様で嬉しい。

「もし分かりにくい所とかあったら、ちゃんと指摘してね。遠慮しないで今後のためにも」

「全然そんな事ない!時間が経つのがあっと言う間に感じるし。前に歴史を教えてくれた先生はとにかく『暗記しろ!歴史は暗記だ!』って繰り返してたから、本当に苦痛だったし」

アマリリス様はそう言って眉を顰めた。

「確かに暗記も大切だけど、どうしてそうなったのか、時代や人物の背景を考えるととても面白いし、一度覚えた事を忘れにくくなるわ。ただ……一つの時代に時間がかかり過ぎるのが難点ね」
と私は苦笑した。

「これだと、学園での授業には向いていないわよね……」
と続けて呟いた私の言葉にアマリリス様は素早く反応した。

「え??学園で授業するの?」

「あ!そうじゃないの。実は私、教師を目指していて……。勉強全般の成績が良いわけではないから、歴史の先生になりたいと思っているの」

「じゃ、じゃあ私が学園に入学したら、マーガレット先生が歴史を教えてくれるって事?」

「ま、待って!!目指しているってだけで、まだまだ先の話よ?教師になる為には試験もあるし、面接もある。それに推薦状だって……」

「えーっ!楽しみだなって思ったのに。でも絶対マーガレット先生は良い教師になれるわ!私、応援してるから。頑張って!」

小さくガッツポーズをしてくれたアマリリス様に私は笑顔になった。
皆が背中を押してくれる。私は一人じゃないと心からそう思えた。

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