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第25話
しおりを挟む「さすがに我慢出来ない!!」
私の通り名は何だ?『本の虫令嬢』だ。だのに、この一週間全く図書館に通えていない。これじゃあ本の虫令嬢の名が廃る。
それもこれもフェリックス様がお茶会に誘ってはドタキャンするからだ。
実は今朝も早くからフェリックス様からお茶会の誘いが届いた。
私はそれを手の中で握りつぶしながら、朝食の席で立ち上がった。
「我慢出来ないって……どうするのさ」
隣でパンを千切って口に入れながらネイサンが私に尋ねる。
「こちらからフェリックス様に会いに行ってくるわ。それで御用を訊くの。何か用があるから私を呼びつけるのでしょう?それならわざわざお茶などしなくても良くない?王宮へ行くわ」
そう言った。
その答えにネイサンは面白そうに言う。
「フェリックス様に姉様が意見出来るの?今まで大人しく従ってたのに?」
「失礼ね。今までは別に意見しなくちゃならない事も無かったのよ」
「あんなに冷遇されてて?」
最近のネイサンは私に厳しい。しかしそれを言われると私も何も言い返せない。
黙る私に、
「でも……いいんじゃない?偶には自分の気持ちをちゃんと言うべきだと僕は思うけど?」
とネイサンはちょっと上からそう言うと、
「ご馳走さま」
と立ち上がった。十四歳になったネイサンの目線が私と同じ位置にあり、改めて驚く。
「ネイサン……もう少しで背丈を追い抜かれそうだわ」
「もうじきだよ。直ぐに姉様より大きくなるよ。だから……いつかは僕が姉様を守れるようになるから、無理してあんな男と結婚しなくたっていいよ」
ネイサンはそれだけ言うと、サッサと食堂を出て行った。
「……かっこいい事言うじゃない」
そう呟きながら、私は自分が今までネイサンにどう見られていたかを悟って心が痛くなった。
弟に心配かけて……ダメな姉だ。
私は今日こそフェリックス様に今回のお茶会について文句を言いに行こうと改めて心に決めた。
学園が終わり、本当なら急いで家に帰り、お茶会の支度をしてハウエル侯爵邸に向かわなければならないのだが、私は今王宮へと来ていた。
お茶会に設定された時間を考えても、まだ王宮で働いている時間に違いない。
「あの……お忙しい所申し訳ありません。私、マーガレット・ロビーと申します。フェリックス・ハウエルの婚約者なのですが、彼を呼び出して貰う事は可能でしょうか?」
私はドキドキしながら、王宮の門番へと声を掛けた。夜会以外で王宮へと来たことなど一度もない。
「フェリックス?あぁ、近衛の。では、少し待ってて貰えますか?」
そう言うと若い門番はもう一人に断って、王宮へと早足で向かって行った。
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