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第24話

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夜会が終わった次の日、フェリックス様からまた命令の様なお茶会の誘いを貰ったが、

「え?キャンセル?」

「そうらしいわ。突然『今日のお茶会は中止』って連絡が」

「そうですか……ならば図書館へ寄ってくれば良かった……」
デービス様にイヤリングを返すついでにもう一度お礼を言おうと思っていたのに……。どうしよう。デービス様は『いつでも良いよ。次に図書館で会えた時で』と言ってくれてはいたけれど。

「暇なら、ちょっとお使いを頼まれてくれない?」

母にそう言われて私は了承した。ついでに少し本屋を覗こう。最近は本を買うのを我慢していたのだから、そろそろ一冊ぐらい良いだろう。それぐらいで床は抜けない筈だ。

私は母の使いで叔母の家を訪れた帰りに、本屋に寄る事にした。

私が本を選んでいると、歴史の本の棚の前でウンウンと唸っている少女が目に入った。
ブラウンの髪を二つ結びにした可愛らしい少女は、本を手にとってはパラパラと捲り、また棚に戻すという作業を何度か繰り返していた。
私は思わず、

「どんな本を探しているの?」
と声を掛けていた。……これじゃあ、不審者と思われかねない。
しかし、その可愛らしい少女は素直に、

「私……歴史が苦手なの。教科書読んでると眠くなっちゃって……。だからもう少し分かり易い本はないかと思って」
と私の質問にそう答えた。

「貴女、幾つ?」

「十三歳」

「なら……ここら辺はどうかしら?私も貴女ぐらいの年齢の時にこの本を読んだの。とても分かり易かったし、面白かったから」

彼女は私が薦めた本をパラパラと捲ると、

「字ばっかり……」
と呟いてため息を吐いた。しかし、

「でもお姉さんのおすすめを信じてこれにする!」
と彼女は明るく言うとその本を胸に抱えて会計に向かった。

「頑張って!」
私が手を振ると、彼女は振り返りながら、

「お姉さんありがとう!私の名前はアマリリスよ!」
と明るく手を振って去って行った。

「アマリリスか……私と同じで花の名前ね」
と妙な親近感を覚えながら、私は彼女を見送った。


私は目当ての新刊を手に入れてホクホクした気分で帰路に着く。
今日は図書館に行けなかったけど、この本で凌げそうだ。明日こそは図書館に行って、デービス様にお礼を!そう思っていたのに……



「またなの?!」

「そうなの……またキャンセルだって。フェリックス様ったら……どうしたのかしらね?毎日、毎日お茶会に誘って、直前でキャンセルなんて……」

私はそれから一週間も図書館に通えない日々を過ごす事になってしまった。
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