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第22話

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フェリックス様からは『口を出すな』と怒られるのではないかと思ったが、

「あ……それはすまない。確かにマーガレットの言う通りだ……庇うのは気に入らないが」
とフェリックス様は素直に謝った。だが……

「それより!!お前は誰だ!!」

は?今こそデービス様は名を名乗ったばかり。何故またそれを訊くのか。フェリックス様、やはり今日は体調が悪いのかもしれない。

「名は名乗りましたが……」
デービス様も困惑気味だ。

「そ、そうじゃなくて。お前の名はわかった。俺が訊いているのはマーガレットとの関係だ!!」

「メグとは……」
デービス様が口を開きかけると、

「メグって呼ぶな!!!呼び捨てもダメだ!!」
とフェリックス様は顔を真っ赤にした。……やはり熱でもあるのだろう。私はつい我慢出来なくなり、

「フェリックス様。お熱があるのではないですか?」
と弟のネイサンにする様にフェリックス様の額に背伸びして手を当てた。

すると、フェリックス様は顔をますます赤くさせ、

「さ、触るな!!」
と私の手を叩き落とす。そこまで強い力では無かったが、思いの外『パシン!』と鳴った大きな音に、フェリックス様は我に返った様に、

「す、すまない。だ、だがお前が急に俺に触れるから……」
とモゴモゴと何か話していた。

「いえ、こちらこそ不躾な事をして申し訳ありません。ただ……フェリックス様の様子がおかしいので体調でも優れないのかと……」
とまだ顔の赤いフェリックス様を見上げて私はそう言った。

「そ、それは……」
フェリックス様が口を開きかけた時、

「フェリックス!!!私の側を勝手に離れないで!!」
と豪華なドレスでエスコートなしでは歩き難かったであろうステファニー様が追いついて、そう声を掛けた。

フェリックス様は振り返り、

「あぁ、ステファニーすまないな。ちょっと捨て置けない事象が……」

「今、私のパートナーを務める以外に大切な事なんて何もないわ。私はこの夜会の主役なのよ?パートナーとして自覚して貰わなきゃ」
とステファニー様は可愛く首を傾げて、まだモゴモゴ言っているフェリックス様の腕に自分の腕を絡めた。


『この夜会の主役』かぁ……。確かに殿下の婚約者であるステファニー様はそう名乗るのに相応しいのかもしれない。

私が読んでいる物語には必ず主人公がいる。自分の人生の主役は?と尋ねられれば間違いなく皆は『自分だ』と答えるのだろうが、私は私の人生において、なんとなく脇役の様な感覚だ。
こんな風に堂々と……いや……そんな自分はやはり想像出来ない。
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