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第19話
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「気にせず楽しもう」
私の気分が顔に出ていたのだろうか?デービス様はそう言うと、
「さぁ、もうすぐ入場だよ。はい」
と私に腕を差し出す。私は笑顔に戻ってその腕をとった。
会場は幾つものシャンデリアに彩られ、さすが王宮といった感じで全ての調度品が豪華だった。
父と数回夜会には参加したが、今日の方が全てがキラキラして見える。
気分が違えば見える景色も違ってみえる……という事の様だ。
今回は若者中心の為、陛下と妃陛下は簡単な挨拶のあと、席を立った。
本当なら、王太子殿下と婚約者であるステファニー様が中心となってこの夜会を盛り上げるのだろうが、殿下は不在。そして、その婚約者は遅れてくるらしい。しかも別の男にエスコートされて。
陛下が立ち上がったのを合図に演奏が始まり、アイーダ様とジェフリー様がフロアの真ん中に出て踊り始めた。
「わぁ……素敵ですね」
「さすが公爵家のお二人だ。皆の視線を独り占めだね」
二人は息の合ったダンスで、皆を魅了した。
そして、それに倣う様に皆も踊り始める。
「メグ、ダンスは得意?」
「得意……ではありませんが、人並み程度には」
私がそう答えると、デービス様は手を差し出した。私はその手に自分の手を重ねると、二人してフロアへと向かった。
皆が次々に踊り、フロアにはドレスの花が咲く。
皆の笑顔に私も同じ様に笑顔になった。久しぶりのダンスに少し息が上がるのは、運動不足だからかそれとも高揚した気分のせいか。
盛り上がりも最高潮になったその時、会場の扉が大きく開かれた。
「皆様、お待たせいたしました。あら……もう始まってましたの?」
とステファニー様が現れた。エスコートするのはもちろんフェリックス様。
皆はダンスの足を止め、二人に注目した。一瞬シン……となった後にステファニー様が通れる様、左右に分かれて道を開けた。
ステファニー様はそこを当然の様に堂々と歩いて中央へと向かう。フェリックス様は真っ直ぐ前を向いたまま、ステファニー様をエスコートする……というより、連れられる様にして一緒に前へと進み出た。
ステファニー様が目指すのは中央に居るアイーダ様達の場所だ。
「ご機嫌よう、アイーダ様。私が遅くなってしまったせいで、お二人にお任せしてしまってごめんなさいね」
「ステファニー様、別に貴女の代わりに最初に踊った訳ではないわ。貴女が王族なのであれば話は別だけど」
傍から見ればアイーダ様の雰囲気も相まって、彼女が喧嘩を売っている様に見えるかもしれないが、先日ステファニー様の裏の顔を少しだけ覗いてしまった私には、最初のステファニー様の言葉の方が引っかかる。
二人はお互い笑顔なのだが、火花が散っている様に見えるのは私の気の所為だろうか?
私の気分が顔に出ていたのだろうか?デービス様はそう言うと、
「さぁ、もうすぐ入場だよ。はい」
と私に腕を差し出す。私は笑顔に戻ってその腕をとった。
会場は幾つものシャンデリアに彩られ、さすが王宮といった感じで全ての調度品が豪華だった。
父と数回夜会には参加したが、今日の方が全てがキラキラして見える。
気分が違えば見える景色も違ってみえる……という事の様だ。
今回は若者中心の為、陛下と妃陛下は簡単な挨拶のあと、席を立った。
本当なら、王太子殿下と婚約者であるステファニー様が中心となってこの夜会を盛り上げるのだろうが、殿下は不在。そして、その婚約者は遅れてくるらしい。しかも別の男にエスコートされて。
陛下が立ち上がったのを合図に演奏が始まり、アイーダ様とジェフリー様がフロアの真ん中に出て踊り始めた。
「わぁ……素敵ですね」
「さすが公爵家のお二人だ。皆の視線を独り占めだね」
二人は息の合ったダンスで、皆を魅了した。
そして、それに倣う様に皆も踊り始める。
「メグ、ダンスは得意?」
「得意……ではありませんが、人並み程度には」
私がそう答えると、デービス様は手を差し出した。私はその手に自分の手を重ねると、二人してフロアへと向かった。
皆が次々に踊り、フロアにはドレスの花が咲く。
皆の笑顔に私も同じ様に笑顔になった。久しぶりのダンスに少し息が上がるのは、運動不足だからかそれとも高揚した気分のせいか。
盛り上がりも最高潮になったその時、会場の扉が大きく開かれた。
「皆様、お待たせいたしました。あら……もう始まってましたの?」
とステファニー様が現れた。エスコートするのはもちろんフェリックス様。
皆はダンスの足を止め、二人に注目した。一瞬シン……となった後にステファニー様が通れる様、左右に分かれて道を開けた。
ステファニー様はそこを当然の様に堂々と歩いて中央へと向かう。フェリックス様は真っ直ぐ前を向いたまま、ステファニー様をエスコートする……というより、連れられる様にして一緒に前へと進み出た。
ステファニー様が目指すのは中央に居るアイーダ様達の場所だ。
「ご機嫌よう、アイーダ様。私が遅くなってしまったせいで、お二人にお任せしてしまってごめんなさいね」
「ステファニー様、別に貴女の代わりに最初に踊った訳ではないわ。貴女が王族なのであれば話は別だけど」
傍から見ればアイーダ様の雰囲気も相まって、彼女が喧嘩を売っている様に見えるかもしれないが、先日ステファニー様の裏の顔を少しだけ覗いてしまった私には、最初のステファニー様の言葉の方が引っかかる。
二人はお互い笑顔なのだが、火花が散っている様に見えるのは私の気の所為だろうか?
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