上 下
15 / 44

第15話

しおりを挟む
応接室に入る前、私は大きく息を吐いた。
……フェリックス様がいったい私に何の用なのだろう。


「失礼します」


部屋へ入ると、長椅子に足と腕を組んだフェリックス様が私を見るなり、

「今日は何処へ行っていたんだ?!図書館に行かなかっただろう?!」
と詰問された。


私は入り口に立ったまま、

「はい?あ?え?」
と目を白黒させる。

フェリックス様はバッ!!と立ち上がると、入り口の私の方へと近付いて来た。……何だか怖い。私は指で眼鏡をそっと直すと目の前まで来たフェリックス様を見上げた。

「何処へ行っていたんだと訊いている」

「あ……あの……カフェへ」

「またか??お前……そんなにカフェが好きなのか?」

「いえ……いや、まぁ好きですけど、あの……」
としどろもどろの私にイラついたのか、

「何故お前はそんなに、オドオドしてるんだ?」
とその原因であるフェリックス様から尋ねられる。……貴方が威圧的だからです……とは言えない。私が答えに困っていると、私の背後から、

「あの……ハウエル侯爵令息様。同僚の騎士の方がお見えです。アンダーソン公爵令嬢様の王太子妃教育がそろそろ終わるから……と」
メイドがそう声を掛けて来た。

フェリックス様は私の背後のメイドにチラリと目をやると、

「チッ!時間か……」
と舌打ちをして、

「俺は行く。いいか?お前は大人しく本を読んでれば良いんだ。分かったな?」
と私の肩をガシッと掴む。私は咄嗟の事に、コクコクと頷くしかなかった。

フェリックス様は嵐の様に来て嵐の様に去っていった。
掴まれた肩が少し痛い。そう言えば……あんなにフェリックス様と至近距離で相対したのは初めてかもしれない。

最近のフェリックス様は何だか変だ。今の今まで私の事など放置していたというのに……私は首を傾げざるを得なかった。
アイーダ様とカフェに行ったあの日……フェリックス様が去っていく私達の背中に声を掛けて来た……様な気がしたが、それを無視してしまったからだろうか?いや……気の所為かもしれないし、そんな事で?と思わなくもない。
だがプライドの高そうなフェリックス様だから……と色々考えてもフェリックス様の事は理解できそうも無かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

何を間違った?【完結済】

maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。 彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。 今真実を聞いて⋯⋯。 愚かな私の後悔の話 ※作者の妄想の産物です 他サイトでも投稿しております

私のことを愛していなかった貴方へ

矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。 でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。 でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。 だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。 夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。 *設定はゆるいです。

【完結】無能に何か用ですか?

凛 伊緒
恋愛
「お前との婚約を破棄するッ!我が国の未来に、無能な王妃は不要だ!」 とある日のパーティーにて…… セイラン王国王太子ヴィアルス・ディア・セイランは、婚約者のレイシア・ユシェナート侯爵令嬢に向かってそう言い放った。 隣にはレイシアの妹ミフェラが、哀れみの目を向けている。 だがレイシアはヴィアルスには見えない角度にて笑みを浮かべていた。 ヴィアルスとミフェラの行動は、全てレイシアの思惑通りの行動に過ぎなかったのだ…… 主人公レイシアが、自身を貶めてきた人々にざまぁする物語──

【完結】ええと?あなたはどなたでしたか?

ここ
恋愛
アリサの婚約者ミゲルは、婚約のときから、平凡なアリサが気に入らなかった。 アリサはそれに気づいていたが、政略結婚に逆らえない。 15歳と16歳になった2人。ミゲルには恋人ができていた。マーシャという綺麗な令嬢だ。邪魔なアリサにこわい思いをさせて、婚約解消をねらうが、事態は思わぬ方向に。

愛されなければお飾りなの?

まるまる⭐️
恋愛
 リベリアはお飾り王太子妃だ。  夫には学生時代から恋人がいた。それでも王家には私の実家の力が必要だったのだ。それなのに…。リベリアと婚姻を結ぶと直ぐ、般例を破ってまで彼女を側妃として迎え入れた。余程彼女を愛しているらしい。結婚前は2人を別れさせると約束した陛下は、私が嫁ぐとあっさりそれを認めた。親バカにも程がある。これではまるで詐欺だ。 そして、その彼が愛する側妃、ルルナレッタは伯爵令嬢。側妃どころか正妃にさえ立てる立場の彼女は今、夫の子を宿している。だから私は王宮の中では、愛する2人を引き裂いた邪魔者扱いだ。  ね? 絵に描いた様なお飾り王太子妃でしょう?   今のところは…だけどね。  結構テンプレ、設定ゆるゆるです。ん?と思う所は大きな心で受け止めて頂けると嬉しいです。

壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~

志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。 政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。 社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。 ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。 ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。 一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。 リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。 ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。 そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。 王家までも巻き込んだその作戦とは……。 他サイトでも掲載中です。 コメントありがとうございます。 タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。 必ず完結させますので、よろしくお願いします。

【完結】可愛くない、私ですので。

たまこ
恋愛
 華やかな装いを苦手としているアニエスは、周りから陰口を叩かれようと着飾ることはしなかった。地味なアニエスを疎ましく思っている様子の婚約者リシャールの隣には、アニエスではない別の女性が立つようになっていて……。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

処理中です...