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第14話

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「二日も顔を見なかったから、病気かと思ったよ」

図書館で私の顔を見たデービス様は開口一番そう言った。

「いえ、体調は問題なかったのですが、街のカフェにお誘いいただきまして」

「カフェか。僕も行ったことはないなぁ。ルーベンス子爵の子ども達はまだ幼いしね。カフェなんて誘う相手も居ないし」
肩を竦めるデービス様に、

「別に男性同士で行っても良いのですよ?」
と私は何も考えずに答えた。

「ほら……僕って訳ありだろ?学園にも通ってないし、友達と言える人物は君しか居ないんだ」

少し寂しそうなデービス様に私は自分の言葉を後悔した。しかし、口から出た言葉はもう飲み込めない。するとデービス様は、

「そうだ。じゃあ、メグ一緒に行かないか?」
と少し首を傾げてそう言った。

「私?」

もう二日連続で同じカフェに行った。正直『また?』と思わなくもないが、さっき私は不用意な発言を後悔したばかり。

「そう。僕には友達は君しかいないしね」
と言われてしまえば私に断るという選択肢は無かった。

そうして私は三回目となるカフェ訪問を約束する事になってしまったのだ。


翌日、さっそく私とデービス様はカフェに行ったのだが……まぁ、それは普通に楽しかった。私達の会話の内容は殆どが今読んでいる本について。
図書館ではお喋りは控えめにしているが、カフェではお喋りが中心。私達の会話は尽きることが無かった。

カフェでデービス様と別れる。送っていくと言われたが、この前の反省を踏まえ、今日は馬車を用意していた。

こんな短期間で三回もカフェに行くとは思っていなかったが、気の合う人とお茶をするというのは、こんなにも楽しいものなのだと、私は初めて知った。……フェリックス様とのお茶会では味わった事がない経験だった。


今日もまた楽しい気分で家に帰ってきたのに……

「メグ大変よ!!」
母がノックもせずに私の部屋の扉をバーンと開ける。

「お、お母様?!どうされました?」

着替えの途中だった私は面くらう。

「は、早く着替えてしまいなさい!!き、来てるのよ!」


「来てる?何が来たのですか?」
私はそう言いながらも着替える手を止めずに、ワンピースのボタンをとめる。


「フェリックス様よ!!」

私はその名前に思わず手を止めた。……フェリックス様が?何故?一昨日カフェで慌ただしいお茶会をしたばかりなのに?

フェリックス様が私を訪ねてくるなんて珍しい。いや……お茶会以外で来たことなどない。

「な、何の用でしょうか?」

「分からないわ。とにかく『マーガレットはいるか』って」


あぁ。せっかくの楽しい気分が台無しだ。
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