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第13話
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「いえ。日頃の運動不足のせいです。意外とここまで遠くて。自分の考えが甘かったのです」
「は?歩いて来たのか?」
「は、はい。いつも学園からは歩いて帰っているので……」
図書館に寄ると時間を忘れてしまう私だが、流石に馬車で御者を待たせていると思うと、ソワソワして本に没頭出来ない。
「馬車ぐらい使えば良いだろう?お前は一応伯爵令嬢なんだ。そんな所でケチるなんて……」
『一応』ね。普通の伯爵家だと思うのだが、フェリックス様はどうも身分で人を格付けしたり判断するきらいがある気がする。最初に会った時も侯爵令息だ、伯爵令嬢だと言われたものね。
「はい。申し訳ありません。以後気を付けます」
「何度も謝るな。謝罪が軽く感じる。さっさと座れ」
私は不機嫌そうなフェリックス様に促されて向かいの席へと腰掛けた。
歩いて来て喉も渇いたので、冷たいお茶を頼むために給仕に声を掛けようと探してキョロキョロしていると、
「おい。俺は時間がない。この後ステファニーを宝石店に連れていかねばならんのだ」
と言われて、私は思わず
『ならば今日お茶会をしなければ良かったのでは?』
と口から出そうになるのを我慢した。
「左様でしたか……」
私は給仕を呼び止めるのを諦めた。向こうが気がついてくれたらその時はお茶を注文しよう……そうしよう。
フェリックス様は腕を組んだままイライラしている様子だ。
この後のステファニー様との約束が気がかりなのだろう。
このまま無言でいても間が持たない。私は意を決して口を開いた。
「あの……今日はどういった御用で?」
私はいつもより早く開かれたお茶会の意図を確認した。
「用とは?婚約者同士がお茶会を開くのは、常だ」
「は?……確かに普通の婚約者同士なら、そうでしょうけど……」
私が口を開く度に、フェリックス様に睨まれて私の言葉尻はどんどんと小さくなっていった。
「何だ?俺達が普通ではないような言い方だな」
普通じゃないと思っているのは私だけなのだろうか?フェリックス様の普通が分からない。
「いえ……決してその様な事は……」
「モゴモゴと喋るな。下を向いて話すから声が聞こえないんだ」
いちいち怒られていては、顔も上げられない。
私は飲み物も注文せず手持ち無沙汰なまま、この地獄の様な時間をどうにかやり過ごせないかと、そればかり考えていた。
「…………で過ごせば良い」
そればかり考えていたせいで、フェリックス様の話を聞いていなかった。はて、今なんて言ったのだろう。でも、聞き返すなんて怖くて出来ない。
「は、はい」
と、一応返事だけはしておく。何の事だかさっぱり分からないけど。
「俺からの話は以上だ。時間がないので失礼する」
フェリックス様はカップに残った珈琲をグイッと飲み干すと、席を立った。私も慌てて席を立つ。
「お前、何も頼んでいないじゃないか?せっかくカフェに招待したというのに。俺は時間がないからもう行くが、お前は何か飲んでから帰れ。カフェが好きなんだろう?カフェが。支払いは済ませておく」
物凄く早口でフェリックス様をそう言い残すと早足で去っていった。
出口付近で私の方を見て店員に何かを言っていたので、支払いは本当に済ませてくれている様だ。
……しかし。何とも勝手な人だ。結局、何の用だったのだろうか?それすら全く分からなかった。
私は改めて椅子に腰掛けて、ゆったりとした気分で給仕に声を掛けた。フェリックス様が居ないと空気が美味しい気がする。
「は?歩いて来たのか?」
「は、はい。いつも学園からは歩いて帰っているので……」
図書館に寄ると時間を忘れてしまう私だが、流石に馬車で御者を待たせていると思うと、ソワソワして本に没頭出来ない。
「馬車ぐらい使えば良いだろう?お前は一応伯爵令嬢なんだ。そんな所でケチるなんて……」
『一応』ね。普通の伯爵家だと思うのだが、フェリックス様はどうも身分で人を格付けしたり判断するきらいがある気がする。最初に会った時も侯爵令息だ、伯爵令嬢だと言われたものね。
「はい。申し訳ありません。以後気を付けます」
「何度も謝るな。謝罪が軽く感じる。さっさと座れ」
私は不機嫌そうなフェリックス様に促されて向かいの席へと腰掛けた。
歩いて来て喉も渇いたので、冷たいお茶を頼むために給仕に声を掛けようと探してキョロキョロしていると、
「おい。俺は時間がない。この後ステファニーを宝石店に連れていかねばならんのだ」
と言われて、私は思わず
『ならば今日お茶会をしなければ良かったのでは?』
と口から出そうになるのを我慢した。
「左様でしたか……」
私は給仕を呼び止めるのを諦めた。向こうが気がついてくれたらその時はお茶を注文しよう……そうしよう。
フェリックス様は腕を組んだままイライラしている様子だ。
この後のステファニー様との約束が気がかりなのだろう。
このまま無言でいても間が持たない。私は意を決して口を開いた。
「あの……今日はどういった御用で?」
私はいつもより早く開かれたお茶会の意図を確認した。
「用とは?婚約者同士がお茶会を開くのは、常だ」
「は?……確かに普通の婚約者同士なら、そうでしょうけど……」
私が口を開く度に、フェリックス様に睨まれて私の言葉尻はどんどんと小さくなっていった。
「何だ?俺達が普通ではないような言い方だな」
普通じゃないと思っているのは私だけなのだろうか?フェリックス様の普通が分からない。
「いえ……決してその様な事は……」
「モゴモゴと喋るな。下を向いて話すから声が聞こえないんだ」
いちいち怒られていては、顔も上げられない。
私は飲み物も注文せず手持ち無沙汰なまま、この地獄の様な時間をどうにかやり過ごせないかと、そればかり考えていた。
「…………で過ごせば良い」
そればかり考えていたせいで、フェリックス様の話を聞いていなかった。はて、今なんて言ったのだろう。でも、聞き返すなんて怖くて出来ない。
「は、はい」
と、一応返事だけはしておく。何の事だかさっぱり分からないけど。
「俺からの話は以上だ。時間がないので失礼する」
フェリックス様はカップに残った珈琲をグイッと飲み干すと、席を立った。私も慌てて席を立つ。
「お前、何も頼んでいないじゃないか?せっかくカフェに招待したというのに。俺は時間がないからもう行くが、お前は何か飲んでから帰れ。カフェが好きなんだろう?カフェが。支払いは済ませておく」
物凄く早口でフェリックス様をそう言い残すと早足で去っていった。
出口付近で私の方を見て店員に何かを言っていたので、支払いは本当に済ませてくれている様だ。
……しかし。何とも勝手な人だ。結局、何の用だったのだろうか?それすら全く分からなかった。
私は改めて椅子に腰掛けて、ゆったりとした気分で給仕に声を掛けた。フェリックス様が居ないと空気が美味しい気がする。
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