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第12話

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カフェは思いの外楽しかった。アイーダ様も楽しそうにして下さっていたのは、私にとっても意外な事だった。

「マーガレット様って……お話面白いのね。博識だし」

「全て本の知識です。丸覚えしてお話していただけで……私、口下手ですし」

「あら?そんな事誰か言ったの?」

……私が口を開くたび私の顔を睨んだ人物が居た……フェリックス様だ。私はその目を直接見るのが怖くて……眼鏡を外さなくなった。正直、眼鏡があると私とフェリックス様との間に壁が出来たようでホッとするのだ。

「いえ……。直接そう言われた訳ではないんです。多分、私の話なんて面白くないんだろうなって……」

「そんな事ないわ。私も公爵令嬢として歴史を学んだけれど、貴女が話してくれる歴史の方がずっと面白かったし、ためになったわ」

そうアイーダ様に言われて、私は嬉しくなって頬が緩むのを抑えられなかった。


アイーダ様に屋敷まで送ってもらって、何となくウキウキと楽しい気分で家に帰り着いたのに……私は今、ある手紙を前に暗い気持ちになっていた。

今日は図書館に行かなかったので、借りてきた本もない。珍しくさっさと課題に取り掛かろうと思っていたのに……。

「どうして急にお茶会をしなきゃならないのかしら?」

私はその手紙……フェリックス様からの手紙を穴が開く程見つめていた。
その手紙には一言
『定例のお茶会を催す。明日、学園が終わったらカフェに来い』
とだけ書かれていた。カフェの名前も書かれているが、今日、私とアイーダ様が訪れたカフェだ。

前回のフェリックス様とのお茶会は一ヶ月半前。いつもなら、三、四ヶ月に一度だから、まだまだ先の筈なのだが……。

「はぁ……」
気が重くなる。明日も図書館には行けそうにない。



学園が終わり、私は昨日も訪れたカフェへと足を向けた。

昨日はアイーダ様の馬車に乗せて貰ったので、然程遠いとは思っていなかったのだが、歩くと中々の距離がある。……足が重いのはカフェが遠いからか……それとも今から会う人のせいか……。

本ばかり読んでいる私には良い運動になったが、カフェに到着する頃には少し疲れてしまった。
素直に自分の家の馬車を用意すれば良かったと後悔しても、もう遅い。約束の時間を少しだけ過ぎた私は、腕を組み、苦虫を噛み潰した様な顔でふんぞり返っているフェリックスの姿を認めて、逃げ帰りたくなった。

(怒られる……)
そう思いながら、早足にフェリックス様の前に立つと、私は素直に頭を下げた。

「遅くなり申し訳ありません」

「遅い!!道草でも食っていたのか?」


やっぱり怒られた。

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