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第8話

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学園に行くと、何となく皆がざわついていた。

「今日はステファニー様が登園しているそうよ」
口々に皆が噂しているのを聞いて、そういう事かと納得する。

彼女は『王太子妃教育が忙しいから』と言う理由で殆ど学園には来ていない。
なので偶にこうして彼女が登園すると、皆が口々に噂すると言う訳だ。彼女は王太子殿下の婚約者、いずれはこの国の王妃となる人物。
皆、彼女のご機嫌を伺い、取り巻きになろうと必死だ。

そんな皆を横目に私はいつも通り本を読む。すると、誰かが私に近付いて来た。その気配に私は本から顔を上げてその人物を見た。

「アイーダ様?どうされました?」
そこには腕を組んで私を見下ろすアイーダ様が居た。

「貴女、ステファニー様に興味はないの?自分の婚約者と懇意にしている人物よ?」

「皆の様にステファニー様のご機嫌を伺いに行かないからですか?そういう意味なら別に興味はありません。それに、お世話になっているのはフェリックス様で私ではありませんから」

本のちょうど山場部分で声を掛けられた為、私は少し不機嫌だったのかもしれない。つい少し強い口調で私はアイーダ様に言い返していた。
しかし、アイーダ様は気分を害した様子もなく。

「……そりゃ、そうか。当たり前ね。でも、貴女がステファニー様に擦り寄っていかないから『婚約者の事でステファニー様を良く思っていないからだ』とか『嫉妬しているからだ。だけど勝ち目がないから、無視を決め込んでいるに違いない』って皆が言ってたわ……悔しくないの?」

どうもステファニー様の取り巻き達に、私は陰口を叩かれているらしい。
アイーダ様はそれを面白がっている……というより、私がそう言われるのを快く思っていない様だ。……やはりアイーダ様は根は悪い人ではないのだろう。

「アイーダ様、私を心配して下さったのですね。でも正直……もう慣れました!言わせたい方々には言わせておけば良いのです」
私がそう明るく言うと、アイーダ様は面食らった様な表情で、

「貴女って……大人しいだけかと思ってましたけど、案外逞しいのね」
と驚いていた。

私達は何故かそこからお互いの話になり、気づけばお昼休みも終わっていた。

「貴女とは仲良く出来そうだわ」

「奇遇ですね。私もそう思っておりました」
アイーダ様は笑顔で授業の準備へと戻っていった。


放課後になり、アイーダ様が私の元を訪れる。

「マーガレット様、この後ご予定はありまして?」

私はいつもの様に図書館へ行こうと思っていたのだが、誰かとの約束がある訳ではない。

「いえ……特には」

「では、最近話題のカフェに行きません?私の家の馬車があるのでご一緒に」

カフェ……。話には聞いた事があるが、行った事はない。私は少し躊躇ったがデービス様の言葉を思い出す。
『経験していない事を本に書くのは難しい』
私は別に本を書く予定はないが、何事も経験!
私は、

「ぜひ!よろしくお願いします」
とアイーダ様に返事をしていた。


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