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第7話

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テキパキと私の採寸を済ませるとローレンさんは
『出来上がりをお楽しみに!!』
と笑顔で帰って行った。


夕食で

「今日、仕立て屋が来ていたって聞いたけど?」
と母に尋ねられる。父は改めて驚いた様で、

「まさか!フェリックス殿に夜会に誘われたのか?」
と驚いていた。……そう、フェリックス様に誘われるなんて、こうやって父が目を見開いて驚くほど……珍しいということだ。
大袈裟に言えば『天地がひっくり返っても起こり得ない』とでも言おうか。
母は私がデービス様と夜会に行く事にしたとは、父には報告していなかったようだ。

「いえ……フェリックス様ではなくデービス様にお誘いいただいたのです」

「デービス?どこの……」

「ルーベンス子爵のデービス様です」

「あぁ。養子に迎えたという……。知り合いだったのか?」

「図書館で良くお会いするので。利用する時間帯が同じみたいで」

「ほう。そうか。まぁ……あのフェリックス殿がお前を誘うわけないか」
頷く父に、ネイサンは、

「そんなのおかしいや。婚約者のお姉様を誘わず他の女性をエスコートするフェリックス様の方が間違ってるのに」
と尤もな事を言った。

「確かになぁ。だがこちらから文句を言うわけにもいかんし……」

あちらは侯爵家。父は何度かこの状況を見かねて私に『婚約を見直すか?』と声をかけてくれたのだが、父の立場を考えると『いえ、このままで』と答えるしかなかった。

正直、もう慣れた。フェリックス様とステファニー様が一緒に居る所を見ても胸が痛む事はない。
今から他の婚約者を探すのも大変だし。

そんな空気を振り払う様に、

「ではあの仕立て屋はデービス様?」
と母が尋ねる。

「はい。まさかドレスまで贈って下さるとは思っていなかったのですが……」
と言う私の答えに、

「ふむ。そのデービス殿とやらは、きちんとした常識のある男性の様だ」
と父は微笑んだ。……比べる相手がフェリックス様だと、大体の男性が『きちんとした』男性になるのだと思う。

夜会への参加を反対される事はなく、私は少しホッとした。友人と参加するのは問題ないとはいえ、私には一応婚約者が居る。まぁ、その婚約者に問題があるので、私が咎められる筋合いはない。
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