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その140〈最終話〉
しおりを挟むー10年後ー
「ほらほら、もうすぐ到着されますよ。3人とも用意は良い?」
「母上、アナスタシアがいません」
「は?アダム今何て?どこに行ったのよ、あの子は!」
「そういえば、さっき、中庭の方へ行くのを見ましたよ?」
「ロビン!どうして止めないの?もう時間がないのよ?」
「シビル、安心しろ。アナスタシアは捕まえた」
「あぁ…良かった。クリス様ありがとうございます。アナ…どうしたの?」
「あのね…おきゃくさまにお花をさしあげようとおもって。つんできたのよ?ほら?きれいでしょう?」
「アナ…綺麗ね。きっとお客様も喜んで下さるわ。でも、今度からは、どこかに行く時は、お母様に言ってちょうだいね」
「はい。ごめんなさい」
「さぁ、もう時間だ。行こうか」
今日は、ランバン王国の国王と王妃をお迎えする。
この度、我がベルガ王国とランバン王国が国交を結ぶ事になった。
1年前、ランバン王国の国王が崩御され、新しい国王が即位された。
新しい国王、ブロア陛下は、ベルガ王国との国交を結ぶ事に積極的であった。
クリス様が侵略による国土拡大を全面的に止め、国内を豊かにする事、また周辺諸国とは友好関係を築いていく事に方向転換をして十数年。
この政策が実を結んだ形だ。
私達はランバン国王夫妻を迎えるべく集まった。
クリス様が、
「いよいよだな」
と言うと同時に、
「ランバン国王陛下、妃陛下到着されました」
との案内で、国王夫妻が部屋に入って来た。
ブロア陛下と、クリス様が固い握手をかわしている横で、
「久しぶりね、シビル…いや、シビル王妃」
「お久しぶりでございます。ミシェル王妃」
私とミシェル殿下の十数年ぶりの再会であった。
ランバン王国の王太子はブロア殿下の兄であったが、ミシェル殿下がブロア殿下の元に嫁いで2年後、不慮の事故で亡くなってしまった。
ブロア殿下は王太子となり、ミシェル殿下は図らずも王太子妃となり、ブロア殿下を支えた。
そして昨年、ブロア殿下は国王へと即位され、ミシェル殿下は、なんとランバン王国の王妃となったのだ。
ミシェル妃は、私の子ども…アナスタシアを見て、
「シビルにそっくりね」
と笑った。
アナスタシアは現在5歳。顔も、そして無表情な所も私に良く似ていた。
私にそっくりなアナスタシアをクリス様は溺愛している。
アナスタシアは、ミシェル妃に、
「はい。これをどうぞ」
と言って、さっき中庭で摘んだ花を差し出した。
青いデルフィニウムだ。
ミシェル妃は、アナスタシアの目線に合わせる様にしゃがみこんでその花を受け取った。
「ありがとう。とても綺麗だわ」
と笑顔でアナスタシアにお礼を言うと、アナスタシアは、微かに笑った。
ミシェル妃は、立ち上がると、
「私の息子の婚約者にどうかしら?」
と私を見た。
「…ミシェル妃陛下と親戚付き合いをする事になるって事ですよね?…出来れば遠慮したいです」
と私が言うと、
「相変わらずね。貴女らしいと言えば貴女らしいわ」
と苦笑いした。
そして、ミシェル妃は、
「ねぇ、デルフィニウムの花言葉を知ってる?」
と私に訊ねる。
「確か…『高貴』とか『清明』とかではなかったでしょうか?」
私が答えると、ミシェル妃は、
「それもあるけど、青いデルフィニウムには『わがまま』って言う意味もあるのよ?」
と笑った。
私達は思わず、
「ピッタリでしょう?」「ピッタリですね」
と声が重なる。
そして、私達は笑いだした。
その声に、クリス様もブロア陛下も、アダムもロビンもアナスタシアも、何故かつられて笑いだした。
その声はいつまでもいつまでも響いていた。
ーFinー
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「隣国へ嫁ぐワガママ王女に付いて行ったら王太子に溺愛されました」はこれにて完結です。
この物語に最後までお付き合い下さいました皆様に心から感謝いたします。
チキンな私はコメント欄を開ける事は出来ませんが、「お気に入り登録」や「しおり」や「エール」の全てが皆様からの愛だと(勝手に)思って、ここまで書く事が出来ました。
本当にありがとうございました。
他に連載中の作品もございますので、そちらもお暇があれば覗いて下さると嬉しいです。
また新しい作品にもチャレンジしていきたいと思っております。またそちらでお会い出来る事を楽しみにしております。
君影草
応援ありがとうございます!
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