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その125

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それからと言うもの、私はクリス様と一緒に夕食を取る事になった。

夕食の度にクリス様の好きな物と嫌いな物を1つずつ知ることが出来た。

お酒が好きな事。
魚より肉が好きな事。
良く焼いたお肉より、レアな肉が好きな事。
紅茶はストレートが好きな事。
森を散策するのが好きな事。
実は釣りが得意な事。
ポーカーが強い事。
夏より冬が好きな事。



香りの強い野菜が苦手な事。
辛い料理が苦手な事。
本を読むと眠くなる事。
雨の日がちょっとだけ嫌いな事。
細かい作業が苦手な事。
ほんの少しイヴァンカ様が怖い事。


毎日顔を見れば、その日の機嫌もわかる。
そんな毎日を過ごすうちに、2人の距離は少しずつ縮まっていった。




「最近は、少し肩の力が抜けてきたみたいね」
とイヴァンカ様に言われて、私は手にしていた本から顔を上げた。

「そう見えますか?今は自分でもちょっとだけそう思えるようになってきたんです。
何となくですが…やっとスタートラインに立てた気がして」

そう私が言うと、

「殿下も最近は機嫌が良いって主人も言ってたわ。侍女はどう?」

私に付いていたイブとニーナは専属を外れただけでなく、侍女を辞めていた。
一応自主退職という事になってはいるが、本当の所は私も知らないし、知る必要もないと思っている。
例えクビだったとしても私にはどうする事も出来ないからだ。

新たに私に付いた2人…リリーとデイジーは2人共に平民だった。
種族差別が根強いのはやはり貴族の方で、そこら辺は平民の方が考え方は柔軟だ。
しかも2人とも商人の娘という事もあって、私が人間である事に、然程、忌避感を持っていなかったのも、選ばれた理由だろう。

「2人とも良くやってくれています。私が1人になりたい時には、そっとしておいてくれますし、必要以上に手を出してもきません。やりやすいです」

「そう。それは良かったわ。護衛も一新したんでしょう?」

「はい。近衛の中でも殿下に近しい方ばかりです。殿下が気を配ってくださっています」

「そう。それなら安心ね。ところで…もう部屋に花が入りきれないんじゃない?」

…何故かこの10日間程、クリス様が毎日花束をプレゼントしてくれるのだ。
その花束で、私の部屋は今、一杯だ。

「そうなんです。なので、明日からは少しの間、プレゼントをお休みして下さるようにお願いしたばかりです」

「これね…うちの主人のせいなの」

「え?フェルト宰相の?」

「そう。シビルを口説くのにどうしたら良いのか、殿下から相談を受けたらしくて、『花を贈ると良いですよ!』なんて自信満々に答えちゃったもんだから、殿下もその気になっちゃって。
主人は私の時に成功したからって。
…実は私も迷惑してたのにね」
とイヴァンカ様は笑った。
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