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その124
しおりを挟む「…すまない。シビルがいつ、『この結婚を辞めたい』と言い出すのではないかと思うと、怖かったんだ。
シビルが俺の事を好きじゃない事はわかってたし、無理させている事もわかってたから。
そんな風に考えていたら、いつの間にかシビルと向き合う事が怖くなっていた…本当に申し訳ない」
「殿下の事を知りたくても、話をする時間もなく、ここの皆さんと仲良くなりたくても上手くいかずで。どうすれば良いのか分からなくなっていました。
自分が此処に居て良いのか…とか、他に相応しい人が居るんじゃないかとか。
でも、私、色々考えるより、体を動かしたり、とりあえずやってみたりする方が性に合ってるんで…これからは、殿下に自分の気持ちを伝える事から始めたいと思います」
「…シビルの気持ち?…まさか…結婚を辞めたい…とか?」
「いえ。結婚は…正直まだ自信はないですけど、辞めません。
でも…まず、殿下にお願いがあります」
「お願い?」
「はい。殿下のお仕事の都合がつく日は、夕食を一緒に食べましょう。その時に殿下の好きな物を1つ、嫌いな物を1つそれぞれ教えて下さい。それと…これからは、私の意見も参考にして下さい。私に纏わる事で何かを決める時には、私も一緒に考えたいです」
「好きな物と、嫌いな物?」
「はい。私、全く殿下の事を知らないので。何が好みで、何が嫌いなのか。まずそこから知りたいと思って」
「わかった。そうだな。それと、お前に関わる事はお前の意見を必ず聞こう。…他人に訊ねるものではなかったな」
…多分、ドレスの事を言ってるんだろうな…ローザリンデ様は殿下の事を諦めきれたのだろうか?
「じゃあ…俺からも1つお願いをしても良いか?」
「はい。もちろんです」
「なら、俺の事はクリスと。前の様に呼んで欲しい」
「…わかりました。ではクリス様とお呼びいたします。様を付けるのは許して下さい」
「仕方ない…それは譲歩しよう」
「クリス様。私は頑張る事ばかりに気を取られていました。私はもっと自然にクリス様と家族になりたいです。イヴァンカ様のご家族を見て…そう思いました。
種族に拘っていたのは…私の方かもしれません」
「いや…周りの目がそうさせたのだ。すまなかった。これからは、何かあったら俺に相談して欲しい。フェルト女史ではなくて」
「はい。そうさせていただきます」
「!シビル…今、微笑んだのか?!」
…私は無意識に微笑んでいたらしい。
きっと無表情な私の事だから、僅かに口角が上がった程度だろうが…そんなに驚かれると逆に凹む。
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