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その122

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私はイヴァンカ様の言葉にすっかり甘えて、あれから既に5日も公爵家にお世話になっていた。

イヴァンカ様から王太子妃教育は変わらず受けさせて貰えているし、ここでは、私に悪意を持って接してくる人もいない。快適だ。

頬の腫れも引いた。色はまだ…完全には戻っていないが、化粧をすれば目立たないくらいにはなってきた。


でも、ずっと此処に居る事は出来ない。そう考えていたある日、イヴァンカ様から、

「そろそろ我慢の限界だったみたいね。殿下がお迎えに来たわ」
と言われた。

私は応接室に通された殿下の元へ向かう。


「シビル。元気だったか?」
と私の顔を見てクリス様は訊ねるのだが、その訊ねたクリス様の方が顔色が悪い。

「はい。私は元気でやっておりましたが…殿下の方こそ…大丈夫ですか?顔色が悪いようです」
殿下は、

「あぁ。俺は…元気ではない。自分で自分が嫌になったよ」
と大きな溜め息をついて顔を伏せた。

「何かございました?」
と訊ねる私に殿下は、

「とにかく、シビル…王城に一緒に帰ってくれないか?少し話しがしたい」
と縋るように私に言った。

「…そろそろ私も戻るべきだと思っておりました。それに…私も殿下にお話しがあります」
そう私が言うと、殿下は肩をビクッと揺らし、

「話し…?…そうか、分かった。そうだな…シビルの気持ちを、きちんと聞かねばな…そうだな…覚悟した方が良いんだろうな」
と小さな声で呟いた。

私はイヴァンカ様にお礼を言う。

「大変お世話になりました。私、自分がやるべき事が分かった気がします」
と言ってイヴァンカ様に頭を下げた。

イヴァンカ様は、
「顔が…少し明るくなったみたいで安心したわ。いつでもまた此処に来て良いのよ?ノアも喜ぶわ」
と言って私を抱き締めてくれた。

この5日間ですっかり私に懐いてくれたノア様が、

「お姉ちゃん、また来てね」
と天使の様な笑顔で私を見送ってくれた。

私はお迎えに来てくれた殿下と一緒に王城へ帰る事にした。

馬車の中では殿下は一言も喋らず。
私もそんな殿下に話しかける事が出来る筈もなく、終始無言のまま、私達を乗せた馬車は王城へと帰って来た。
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