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その112

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今日は全てのレッスンを中止にし、私は部屋で休む事になった。

痛みはあるが、痛み止めの薬も飲んだし、散々冷やしたので随分と楽になった。

しかし、なにもせずにゴロゴロとしているのも性に合わず、イヴァンカ様から借りたこの国の歴史書を読んでいると、部屋をノックする音が聞こえる。

「すみません。バーレクです。部屋へ入っても?」

「どうぞ」
と私は扉を開けた。
喋り憎いので、言葉は最小限だ。


本来なら、扉を開けるなんてのは、侍女の仕事なのだ。
しかし、寛ぐべき部屋の中で悪意ある視線に晒されるのは、なかなか精神的に来るものがあった。
なので、いつもはあの2人には、向かいの侍女用の控え室に待機して貰っている。

私は自分の身の回りの事なら、殆んど人の手を借りずに済むし、正直1人の方が気楽だ。

私から歩み寄らなければ…そうは思うのだが、王太子妃教育が想像以上に大変過ぎて、自分にその余裕がない。


バーレク様は部屋に入るなり、

「申し訳ありませんでした」

と頭を下げた。

『頭を上げて下さい』と言いたいのだが、
…「あたまをあげてくらさい』
としか言えなかった。察して貰いたい。

「あぁ。確か頬が腫れているとか…。それも、これも私達近衛が油断していたせいです。
先程王太子殿下から、付いていた者達への処罰は言い渡されましたが、全ては私の責任です」

…喋れないのがもどかしい。
私は急いでペンを取り、私の気持ちを文字に書き記していく。

『バーレク様のせいではありません。それに、今日付いて下さっていた近衛騎士の方々も、お相手が公爵令嬢という事で、まさかこんな事になるとは思っていなかったと思います』

私が書いた文字をバーレク様は読み終わると、

「いえ、それこそが油断なのです。しかもエクルース公爵令嬢は、怒りながら近付いて来たと言うではないですか。
そんな相手をモンターレ嬢の傍まで近づける事を許すなど…有り得ません。
もし相手が刃物を持っていたとしたら…これぐらいの怪我では済まされませんでしたので。
…本来なら今日の護衛に付いていた近衛は…処刑されても文句は言えません」

処刑?!嘘でしょう?!私は目を丸くした。
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