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その109
しおりを挟む突然の事に、護衛達は一瞬遅れたものの、私とその女性の間に立つ。
キャンベル医師は、
「ちょっ!ローザリンデ!何をするんだ!!。シビルちゃん大丈夫?」
と、私の頬に触れた。
私は唖然としながらも、あぁ、やっばりこの人はローザリンデ様で間違いなかったと、日頃の勉強の成果に思いを馳せた。
もしかしたら、現実逃避したかったのかもしれない。
だって、これが刃物だったりしたら、この近衛達は処罰ものよね?
ローザリンデ様は、
「ちょっとオットー!この泥棒を知ってるの?この女は、私がクリスティアーノに買って貰ったドレスを着ているわ。泥棒よ!近衛!この女を捕まえなさい!」
と凄い形相で私を睨み、声を荒げた。
ローザリンデ様は猫?猫の割りには野性味が強い気がする…。
尻尾を膨らませた様は、警戒心の強い野良猫のようだ。
「お前は馬鹿か!なんでクリスティアーノがお前にドレスをプレゼントするんだよ!よく考えてから物を言え!
シビルちゃん。頬が真っ赤だ。直ぐに冷やそう。
おい!近衛!お前達は処罰を覚悟するんだな!
僕はシビルちゃんを医務室に連れて行く。ローザリンデを捕らえておけ!」
そうキャンベル医師は言うと、私を横抱きで抱き上げた。
所謂、お姫様抱っこだ。恥ずかし過ぎる。
「キャンベル様、私、歩けます。痛いのは頬だけです」
と言うも、
「ドレスにヒールの靴で歩くより、僕が抱えた方が早いから、少し我慢してね」
と言って、さっさと歩き出してしまった。
「ちょっと!オットー!その女を離しなさい!泥棒なのよ!」
と医務室に向かう私達に叫ぶ、ローザリンデ様。
数人の護衛は私達に付いて来ているが、捕らえておけと言われた為、残りの護衛はローザリンデ様を取り囲みながらも、公爵令嬢に手荒な真似は出来ないと、戸惑っている様だった。
そのうちの1人は急いで走っていった。きっとクリス様に指示を仰ぎに言ったのだろう。
私はお姫様抱っこの恥ずかしさから、顔を思わず隠してしまったが、
「痛い?大丈夫?」
とかえってキャンベル医師を心配させてしまっただけだった。
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