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その106
しおりを挟む「はぁ…」
「どうしたの?溜め息なんてついて」
イヴァンカ様との勉強の時間に溜め息なんて、失礼な話しなのだが、つい出てしまう。
「私の実家って…貧乏なんですよ」
「何なの?急に」
「なので、使用人なんて、庭師と料理人ぐらいでですね。家族の皆、自分の事は自分でするんですよね」
「……とりあえず、最後まで聞くわね。それで?」
「昨日、父がアルティアに帰る時に言ったんです『ここに来て、過剰な程の待遇に、体が拒否反応を起こしたのか…蕁麻疹が出た』と。『慣れない事はするもんじゃないな。お前も気を付けろ』と」
「なるほど。で、シビル?蕁麻疹なら医務室へ行きましょうか?それとも医師を呼んで来る?」
「いえ。大丈夫です。蕁麻疹は出ていません。ただ、眠れません」
「確かに、隈が出来てるわね。やっぱり医務室に行く?それとも医師を呼んで来る?」
「出来る事なら、小さくて固めの寝台で眠りたいぐらいです。後、いつも誰かの目に晒されているって、こんな苦痛なんですね。逆の立場になって初めて分かりました」
「私はランバンでも公爵令嬢として育ったから、この国に追放された直後なんて、自分では何一つ出来なくて困ったけど…」
「そうですよね。貴族令嬢としては、それが正解なんだと思います」
「こればっかりは、慣れるしかないのよね。とりあえず今日の休憩のお茶は、安眠効果の有るものにしましょうか」
「はい。ありがとうございます」
「あと、踵の中央部分をゆっくり呼吸しながら、痛くない程度に押すとよく眠れるときいた事があるわ」
「ありがとうございます。早速試してみたいと思います」
私はたった数日で疲れ果てていた。
もしかしたら、あと数日もすれば蕁麻疹も出るかもしれない…。
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