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その81
しおりを挟む翌日、私とミシェル殿下はフェルト公爵家にお邪魔していた。
殿下は、ベルガ王国に来てからと言うもの王城から一歩も外に出ておらず、今回の外出を楽しみにしているようだった。
そう思うと、軟禁に近かったし、殿下も可哀想だったなと思う。
もう、ミシェル殿下はアーベル殿下の婚約者でもないので、王家からも外出は特に咎められる事はなかった。
フェルト宰相の口添えがあった事も大きいだろう。
フェルト公爵家には、人間の侍女も居て、殿下のお世話を手伝ってくれる。とてもありがたい。
殿下とはここから、少し離れた湖まで足を運ぶ事にしており、その湖のある町に宿泊する予定だ。
湖に着き、ピクニックを楽しむ。綺麗な景色と綺麗な空気に、久しぶりに殿下も笑顔になった。さぁ、次は宿屋に場所を移そうとしたその時、私は、
「殿下、大変申し訳ありません!私、フェルト公爵邸に1度戻らなくてはならないのですが…私が離れても宜しいでしょうか?」
「別に良いわよ。公爵様の侍女は出来が良くてなんの不便もないし、なんなら此処に戻らなくても大丈夫よ。どうせ私も明後日には公爵邸に戻らせてもらうのだから」
と殿下はいつになく寛大だ。
久しぶりの外出に浮かれているのは間違いない。
それも想定済みだった。
そして、私は夕方を過ぎた頃、公爵邸に戻った。
「シビルお帰りなさい。とりあえず、手紙は書いた?」
「はい…イヴァンカ様の言う通り書いてみたのですが…これでどうでしょうか?」
イヴァンカ様から、『フェルト女史でははなく名前で呼んで?これからきっと長い付き合いになるから』と言われたので、私は、2人の時にはイヴァンカ様と呼ぶようにしているが、まだ慣れない。
「うん。これで良いと思うわ。じゃあ、貴女はその時になったら隠れて頂戴ね」
「あの…本当に大丈夫でしょうか?イヴァンカ様のお立場や、宰相様のお立場が悪くなったりしませんか?」
「大丈夫よ。主人も王太子殿下の貴女への物言いに腹を立てていたんだから。
それに、私がお願いして、主人が断った事はないの。私の立場も大丈夫。私はあの子達の『先生』だから」
「『先生』?」
「そう。私、あの子達の家庭教師をしていたの。特に王太子…クリス様には手を焼いたわ。色々と私にたくさん迷惑かけてくれたのよ。
私もたくさん尻拭いしてきたしね。
なので、あの子は私に頭が上がらないのよ。
それに、もしバレて私をクリス様が責めても、主人がなんとかしてくれる筈よ」
…フェルト宰相はどんだけイヴァンカ様に首ったけなんだろう…。
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