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その50

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翌朝、レジーとユリアが殿下の部屋にやってきたのだが…。

「あの…大変申し訳ありませんが…まだ殿下は…その、起きられておりませんので、まず、私が今使っている、侍女の控え室にご案内します。どうぞ、こちらへ」
と、まだ眠っている殿下に配慮したヒソヒソ声で、私は今、自分が私室のように使っている部屋に案内する。
廊下からも、殿下の部屋からも入れるようになっている為、いつもは殿下の部屋から出入りしているが、今日は廊下側の扉から2人を案内した。

そこは元々3人くらいで使えるぐらいの広さの部屋に、一人用のベッドが3台。
鏡台が1つとクローゼットが1つに、小さなテーブルと椅子が2脚、それと部屋の隅に扉があり、侍女専用のご不浄が付いている。

今までは、私1人で使っていた為、かなり贅沢な使い方をしてきたが、今後は本来の使い方に戻る事になりそうだ、そう思っていたのだが…。

「あの…シビルさんごめんなさい。私達は此処ではまだ、通いの侍女なの」
と赤毛のレジーが申し訳なさそうに私に告げた。

「え?あ、そうなんですね。失礼いたしました。てっきり常駐だと…」

「昨日、はっきりとは伝えていなかったものね。でも、交代で夜間も控える事は出来るから、シビルさんの負担は減らせると思うわ」
とユリアが微笑んでくれた。


私は、思いきって気になっている事を訊いてみる事にした。

「お2人は…ゲルニカには…?」

アーベル殿下のゲルニカ行きは、王城に勤めている使用人は知っているようだった。
もちろん、ミシェル殿下はまだ知らないのだが。
2人がもし私の後任であるなら、その事も、もちろん承知しているのではないかと私は考えた。
しかし、此処で通いなら、流石にゲルニカには付いて行けないのかもしれない…そうすれば、私のクビはなんとか免れるのでは?という期待を込める。

レジーは、

「ええ。もしミシェル殿下が私達をお認めになれば、ゲルニカにもお供する予定よ。
通いなのは、その…此処王城に殿下が滞在している間だけなの…その…なんて言うか…私達もどうしてか分からないのだけれど」

通いであるのは、2人の都合という訳ではなさそうだ。レジーの少し困惑した様子がそれを物語っている。

もしかしたら、ミシェル殿下の性格を考えて、殿下が2人に慣れるまでは程よい距離を持たせる為なのかしら?

しかし、ゲルニカに行く可能性も2人は了承してるのね…ますます、私の後任なのかもという思いが私の胸を締め付けた。
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