隣国へ嫁ぐワガママ王女に付いて行ったら王太子に溺愛されました

初瀬 叶

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その23

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「殿下は…私に挨拶の事を叱責されましたが…その事について、私にお話になりませんでしたが…」

「そりゃそうだろ。皆、苦笑いでお前の主を見ていたが、誰もそこで訂正しなかったしな」

…ある意味、その場では恥をかかなくても済んだかもしれないが…それでも、陛下を始めとする皆様に心証が悪くなった事は間違いない。後で殿下に訂正をしておかなければ…。

「はぁ…。でも、その場に王太子殿下もいらっしゃったのでしょう?さぞかし不快な思いをされたのではないでしょうか…」
私が不安そうな顔をすると、

「………まぁ、大丈夫だ。お前が心配する事じゃない」
とクリス様が慰めてくれた。

しかし、クリス様が大丈夫だと言ったからといって、私の気持ちが晴れる事はない。

「他には…何かありますか?」
と私は自分に追い討ちをかけるが如く、更にクリス様に質問してみた。

「訊きたいか?顔色が悪いようだが…」

「…一応聞いておかなければ、殿下の勘違いを訂正する事も出来ませんし…」
本音では聞きたくない…でも、聞かないでいる程図太くもない。

「まぁ、アルティアからの手土産についても、こちらの質問には殆んど答えられなかったな。せっかくの素晴らしい加工技術だったが…宣伝効果は見込めまい」
…あ…あ…やっばり…

「それと、アーベル…アーベル殿下だがな…」

「は、はい!』

「…多分、お前の主の事は嫌いだと思うぞ。あいつは、自分本意なやつは嫌いだとさ」
……そんなハッキリと…

「でも、この結婚は…国と国とを繋ぐ為の物。好きだの嫌いだの、そこには必要ないんじゃないですか?」

「お前…情緒がないな」

…そんな事クリス様に言われたくない。自分でも自覚はあるけど。

「王族の結婚なんて、そんな物でしょう?貴族だってそうなんですから」

「そうかぁ?俺は少なくとも嫌いな奴とは結婚したくないがな」

…誰だってそうだろうけど、それを口にするかしないかは別だ。

そういえば、もう結構な時間が経った気がする。戻らなければヤバイ。

「すみません、もうそろそろ戻りませんと…お茶もサンドイッチも美味しかったです。ありがとうございました」
と私はクリス様にお礼を言うと、席を立つ。

「ん?もう行くのか?じゃあ、送る」

「いえ、大丈夫です。それに、食器を厨房に持って行かないといけないので…」

「あれはもう片付けさせた。それに、ここは簡単には立ち入れない場所だ。
俺と居ないと、誰かに見られたら咎められるぞ」
…そうだった…。

「では、すみませんが、よろしくお願いします」

結局、私はクリス様に部屋まで送ってもらう事になった。
ワゴンまで片付けてもらって申し訳ない。
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