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その15

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私達はベルガ王国に入ってから、
約3日をかけて、王都に着いた。

ミシェル殿下も、アルティアでは何度も休憩をねだったが、流石にベルガ王国の護衛には我が儘は言えないと感じたのか…それ以上にクリス様の圧が強いのか、必要以上に休憩を取る事なく、比較的スムーズに王都へ着く事が出来た。
(その分、馬車の中では散々私に当たり散らしたのだが)


ただ、1つ私には気になる事がある。
何故かクリス様が、何かと私に絡んでくるのだ。

休憩を取る時、宿泊先に着いた時…等々、私の馬車の乗り降りには決まって私に手を差し出す。
「1人で出来ますよ?」と何度か言ったが、それでも毎回必ず馬車の扉を開けるとそこに居る。
なので、最後ら辺は面倒くさくなって、されるがままにしていた。

私はただの侍女だ。そんなに気を使って貰うような人間ではないのだが…。

そして、そんなクリス様と私を、他の護衛の騎士達がこそこそと見ては、ヒソヒソと話をしている。

人間嫌いだと言っていたクリス様が私と喋るのが信じられないのだろうか…なんとなく居心地が悪い。


馬車の速度が少し緩やかになった。
もうそろそろ王城へ着いたのかと思い、窓から外を見る。
今は跳ね橋の上を通っているようだ。
1度馬車が止まったのは、王城の門が開かれるのを待っているのだろう。

いよいよ、私も殿下も此処での暮らしが始まるのだ。
私は改めて気合いを入れた。


馬車がゆっくりと止まり、扉が開かれる。
やっぱりそこにはクリス様。
私はここ最近で慣れてきたその手を取って馬車を降りる。

私が振り返りミシェル殿下に手を出そうとするも、

「他の護衛がする。お前はしなくて良い」
と言われた為、ミシェル殿下が護衛の手を借りて馬車から降りるのを見守った。

その護衛は、もちろん獣人だ。
ミシェル殿下がその手を取る時、明らかに嫌そうな顔をした。

私の隣のクリス様は、

「お前の主は、『獣人嫌いの人間』のようだな」
と小さな声で言った。

確かに、ベルガ王国に着いてから、王都までの道中、殿下は護衛の誰も自分には近付けなかった。

馬車から降りる時も乗る時も、私が全て手を貸していたし、宿泊先でも、殿下が部屋から出る事は無かった。

ここに来て、初めて見せるミシェル殿下の拒絶の色だ。

手を貸さなかった私を、殿下は一睨みした。

「お前の主を好きになれそうにはないな」
とクリス様は言う。

そして、彼の手は何故か私の手を握ったままだ。

殿下は馬車を降りると、その騎士の手をすぐに離した。
私も急いでクリス様の手から逃れ、ミシェル殿下の後ろに着く。

ミシェル殿下は唸るように、

「あんたのせいで、あんな奴の手を借りる事になったじゃない。覚えておきなさい」
と私に小声で囁いた。

ここで大声を出さなかっただけマシだと思おう。
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