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第33話
しおりを挟む「けっ…………こん?」
「あぁ、結婚だ。結婚とはな、『配偶者と呼ばれる人間の間にある文化的、法的に認められた繋がりの事で……』」
「結婚の意味ぐらい知ってるわよ。私、バツイチなんだから!」
「は?バツイチって何だ?」
しまった。驚き過ぎて前世の自分が出てしまった。
「いや……いいの。忘れて。それより何故結婚?
私なんかと結婚したって、セドリックに旨味なんて、全然無いわよ?」
と言って私はセドリックの真意を探ろうとジッと彼の目を覗き込んだ。
「……ねぇ、セドリック。今回の新規事業の件でまた、何かオーヴェル家に害をなしそうな人物が現れたのね?
それとも……母とラルフの一件がオーヴェル家にとって不利に働きそうな事柄でも?」
と私が言えば、セドリックは溜め息をついて、
「あのなぁ……。まぁ、強ち間違ってはいないよ。陛下もこの新規事業には乗り気だ。この事業は国を巻き込んだ大きな物になりつつある。もちろんそれを良しとしない家が、いちゃもんをつけ始めたし、その家の中にラルフと懇意にしていたご夫人の家もある」
「やっぱり……。貴方、私に昔言ったわね『私を守る』『不幸にさせない』と。そんな約束、律儀に守る必要はないの。
オーヴェル家の事はオーヴェル家で方をつけるわ。貴方に守られないといけない程、私は弱くないつもりよ。どうしても助けて欲しい時には、……その時にはちゃんと助けてって……」
「ストーッブ!!まぁ、待て。本当にお前は妙に勘が鋭いくせに、変な所で鈍感なの、それ何なんだ?」
「それって……褒めてるの?貶してるの?」
「両方だ!!」
両方。最初のは褒められたのよね、鈍感……は貶されてるって事ね。なんだか、色んな人に鈍感って言われるけれど
私にそのつもりは一切ない。
「どういう事よ」
と私が口を尖らせれば、
「あのな、確かに俺は『お前を守る、不幸にさせない』と言った。あの時は無理矢理お前にお飾り王妃を押し付けた申し訳なさもあったが、それだけな訳ないだろう?なぁ、お前……本当に俺の気持ちに気づいてないのか?」
と呆れたようにセドリックは言った。
「あの時、私を王妃にしようと考えたのは、この国をデイビット殿下が思い描いていた国に変える為に必要だったからでしょう?
貴方が私を生け贄の様に王家に捧げた時には恨んだりもしたけど、貴方の真意を察してからは、私も貴方に協力してきたつもりよ?
貴方の気持ちは言われなくてもちゃんと理解していたわ」
と未だ不貞腐れている私の隣にセドリックは移動してきた。
そして私の両肩を掴み、私と目を合わせると、幼子に言い聞かせるようにこう言った。
「いいか、良く聞けよ?『守る、不幸にさせない』なんて言葉を男が言うのはな、惚れた女にしか言わないんだよ。
俺はずっと前からお前が好きなんだ。ずっとだ。婚約者になった時からずっとだよ、ずっと。結構しつこいだろう?
お前がリッチの事を好きだろうが、お前が王妃となって陛下の横に立っていようが、ずっとだ。
1度たりとも、この想いが消えてくれた事なんてなかったよ。何度も何度も消えてくれと願ったが無理だったんだ!」
と最後叫ぶように言ったセドリックの顔は真っ赤だった。
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