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第26話
しおりを挟む「落ち着いて聞けと最初に言っただろ?で、だ。これはお前の執事から預かったものだ」
とセドリックは胸ポケットからしわくちゃになった紙を出した。
落ち着けと言われた手前、私は渋々椅子に座り直すと、その紙を広げる。
それに目を通すと、
「これって……?」
「これは、お前の母親の部屋のゴミ箱にあった物らしい。さっきお前の母親の様子を見に言ったローレンスが見つけた」
その紙には、
『まさか貴女がジュリエッタの母親だったなんて。もう2度と僕の前に現れないでくれ。僕は愛するジュリエッタの為なら、今までの生活を全て捨てる覚悟だ。これからは、まっとうな生活をしたいんだ。もう僕の邪魔をしないでくれ』
と書かれていた。
察するにこれは……
「これはラルフが書いたものかしら?」
「おそらく。ラルフはジュリエッタ嬢を真剣に愛している様だな。
ここからは俺の推測だが……ジュリエッタ嬢はきっと自分の母親と別れて欲しい……そうラルフに告げたんじゃないかな?
そこでどんな話になったのかは分からない。
もしかしたら、ジュリエッタ嬢はラルフに好意を持っているフリをしたのかもしれない。それとも母親と別れたら付き合ってあげると言ったのかもしれないし、そうでないのかもしれない。
しかし君の母親はこの手紙ラルフから貰って、この内容からジュリエッタ嬢がラルフを盗った…と勘違いしたんだ。ジュリエッタ嬢が実際はラルフと付き合ってないとしても」
先ほどのジュリエッタの発言を思い出す。
『まさか…そんな事で、私を』
と言った。
そんな事とはラルフに関係を断って欲しいと願った事を指しているのかもしれない。
そうだとしたら、まさかそんな事が原因で実の母親が自分の命を狙うなんて……とショックを受けるのも頷ける。
黙り込んでしまった私に、
「俺だって、それを聞いた時に何の冗談かと思ったよ。若い男に入れあげるのは勝手だが、まさか自分が金蔓だと思っていなかったとはな」
とセドリックは溜め息混じりに言った。
前世でいう所の『ガチ恋勢』という事か。いや、母の場合は体の関係があったのだ。それ以上の執着であったに違いない。
ある意味『地雷』という事だ。
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