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第15話
しおりを挟む目を覚ました父はジュリエッタの顔を見て弱々しく微笑んだ。
ジュリエッタは涙を流し、父の手を握っている。そして少し離れて私。……そして、
「あなた!目を覚まされたのですね!私、信じておりました!本当に良かったですわ!」
と流れていない涙をハンカチで拭いながらジュリエッタを押し退けるように母は父の手を奪って握った。
ジュリエッタはその拍子に床に倒れ押し出された。
私の後ろに居たローレンスが直ぐにジュリエッタに手を貸し立たせる。ジュリエッタは母のその行いに目を丸くしていた。
主治医が私にそっと目配せする。私は頷くとジュリエッタや母に気づかれぬようマルコ様と部屋を出た。ローレンスはおいていこう。ジュリエッタと母が揉めた時の仲裁要員として。
廊下に出ると主治医は難しい顔で、
「前侯爵様は確かに目を覚まされましたが、これ以上お元気になられる事は難しいかと思います。良くて起き上がる事が出来るようになるか……」
と言葉を切った。
私は、
「…悪ければ、そのまま寝たきり…という事ね」
と主治医の言葉の続きを告げる。
主治医は、
「はっきり言えば、そうですね。今は薬でなんとか心臓の機能を保っていますが、これがいつまでもつのかは誰にもわかりません。最悪な場合も想定しておかなければなりません」
最悪な場合ーそれは父の死を意味しているのだと、私は理解した。
「わかりました。今はジュリエッタも喜んでいるし、この事は私だけの胸に。機会をみて私から家族には話ます」
と私が言えば、
「私も今まで通り治療に尽力いたします。しかし、あとは前侯爵の体力次第かと」
と主治医は私に頭を下げた。
すると、部屋の中から、なにやら怒鳴り声が聞こえる。ヒステリックな女性の声…母親か?それを詰る女性の声…ジュリエッタだな。そして仲裁をしようと頑張っている男性2人の声。セドリックとローレンスといった所か。
やっと意識を取り戻した患者の前で何をしているのか。
しかし、私が部屋へ入る前に、主治医はマッハの早さで部屋へ入ると、
「患者を刺激しないで下さい!」
と大声ではないがドスの効いた声で一喝した。
ほら…怒られた。
主治医の剣幕に、一瞬部屋の中に静けさが訪れた。
が、それを破る様に、
「ジュリエッタ……貴女は何もわかってないわ。お父様が目を覚まされた今、クロエには侯爵の座を降りて貰うのは当たり前でしょう?」
と母はどことなくジュリエッタを馬鹿にした様な物言いでそう言った。
……何ですと?
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長い間、投稿出来ず申し訳ありませんでした。
今後も投稿頻度は少し落ちるかもしれませんが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
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