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第12話

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頭の痛い問題になってしまった。
ジュリエッタに懸想している相手が母の不倫相手。

「ジュリエッタは母とこの…ラルフって男性の関係を知ってるの?」
私がローレンスに訊ねると、

「さすがにそこまでは分かりませんでした。2人の会話を侍女や護衛も全て聞いている訳ではないらしく」
と少し申し訳なさそうにしているローレンスに、

「あぁ、ごめんなさい。責めてる訳じゃないの。短期間でここまで調べてくれただけでも御の字よ。ありがとう」
と私が言うと、

「いえいえ。私の女王様の為でしたらこれぐらい軽いものです」
とまたまた胡散臭い笑顔を見せた。そんな彼に、

「その女王様のお願いをもう1つ叶えてくれないかしら?」
と私が微笑めば、

「何なりと、女王様」
とローレンスはわざとらしく深々と礼を取った。

「ねぇ。貴方、私の執事にならない?」
そう言った私に、ローレンスは、

「は?へ?執事?執事…とは…あの執事?」
珍しく動揺しているローレンスに、私は思わず吹き出した。冷静で皮肉屋の彼には本当に珍しい。

「他に何の執事があるの?今の執事はもう高齢なの。とても長くオーヴェル家に仕えてくれていたから、辞めさせる訳ではないのだけど、世代交代も必要だと思うのよね。私はこれからのオーヴェル家を私と一緒に盛り上げてくれる人を求めてるの」
と私がローレンスに言うと、彼はいつになく真面目な顔で、

「クロエ様。私は平民です。しかも商会に拾って貰う前には詐欺師まがいな事で生きてきた、半端な人間です。貴女は元王妃。そしてこの国で初めての女侯爵だ。そんな貴女に仕える者がこんな得体の知れない男では、貴女の評判に傷が付きます」
と私に言った。

「そんな事、どうでも良くない?」
私が軽い口調でそう言うと、ローレンスは目を丸くして、

「どうでも良くありません!私は…貴女に借りがあるのです。貴女の迷惑にだけはなりたくない」

ローレンスは所謂ジゴロだ。貴族の未亡人を狙って養って貰っていたのだ。
まぁ、それ事態は犯罪ではない。しかし、ローレンスの悪い所は、同時に複数人のご婦人を相手にしていた事だ。
女の嫉妬程恐ろしいものはない。彼は何度もそれで揉め事を起こしていたのだった。

その中に私が王妃時代にお茶会に招いたご婦人が居た。私はその話を聞いて、ローレンスに興味を持った。
そして、彼に接触したのだった。
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