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第11話

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「こちら、報告書になります」

2日後、ローレンスは私の執務室へと顔を出した。

「もう?早かったわね」
私が驚いた様に言うと、

「女王様のご命令とあらば、これぐらい造作もありませんよ」
と、またもや胡散臭い笑顔で私に言った。

この男、本当に本心を見せる事がない。流石は元詐欺師…いやいや、本人は否定していたか。
まぁ…仕事さえやってくれたら私は良いのだけど。

私はその報告書に目を通し、ある箇所に目を止めた。

そして顔を上げて、ローレンスを見ると、ローレンスも私の驚きを肯定するように頷いて、

「その男の名は『フリオ』
ジュリエッタ様が訪問されている教会の前に赤子の頃捨てられていたそうです。
孤児院の出身と言う話に間違いはありませんでした。現在、26歳。
孤児院で15まで暮らし、その後は大工見習いをしていたようですが、長くは続かず。その後も職を転々としていますが、どの職業も長くて半年、短い時には3日程で辞めています。しかし…今の仕事は長く続いているようですね。もう5年半か。
今は『ラルフ・アルバス』と名乗っていますね…名前と言うより芸名…と言った方が的確でしょうか。舞台役者をしています。
かなり甘いマスクをしていますからね、役者に向いていたんでしょう。結構多くのご婦人達が夢中になってるようです。その中でも、随分と彼にご執心なご婦人がおりましてね…それが…」
と言うローレンスに被せるように、

「それが母…って訳ね」
と私は言った。

ローレンスは頷きながら、

「ラルフの取り巻きのご婦人方から、お母様はとても嫌われていらっしゃるようです。人気者を独り占めしようとするのは良くない。総スカンって所ですね」
と少し冗談ぽく言った。…が、本当の事なんだろう。

「その…ラルフという男性と母の関係って…」
セドリックに聞いて知っているとは言え、実は間違いだった、体の関係などない…そうローレンスが言ってくれないかと、心のどこかで期待してしまう。

「クロエ様もご存知でしたか…。まぁ…ラルフも金が欲しいようですからね」
とローレンスは肩を竦めた。

…あぁ…やっぱり黒だったか…。

「ラルフって人気者なんでしょう?なら、お金ぐらい…」
と私が言えば、

「ラルフは孤児院に随分と寄付しています。あの教会も孤児院もかなり年季が入ってますからね。修繕費も馬鹿にならないようです。
国からの補助もありますが、焼け石に水と言った所でしょう」

陛下に頼んで、もう少し孤児院に対する補助金を上乗せ出来る提案でもしようかしら?
私はまるで現実逃避をするように、そんな風に別の事を考えていた。
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