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第3話

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「どうしたの?急に」

私とジュリエッタが向かい合わせで腰かけると、ナラがお茶を淹れてくれた。

ジュリエッタはナラをチラリと見ると、少し頭を下げた。

…まぁ…少しは修道院でしつけをしてもらったようね。

私もナラに「ありがとう」と声を掛け、席を外すように頷いて合図を送った。

ナラが居なくなり、ジュリエッタと2人きり。
ちょっと気まずい。

暫くすると、ジュリエッタは静かに、

「お父様…目を覚まさないのですね」
と話し始めた。

ちなみに母親はドレスを買いに出掛けてる…らしい。

正直、彼女が何をしていようと興味はない。
なるべく大人しくしていてくれと願うばかりだ。

「そうね…。かなり心臓が弱ってるらしいから。でも…生きているわ。望みは捨てないし、お医者様も良くしてくださってるの」
と私が言えば、

「…お母様は?お父様を置いて何処へ?」
少しジュリエッタの声に怒りが籠る。

…ジュリエッタが母親に怒っている所なんて初めて見た気がする。…いや、私がここの家族に興味がなくて知らないだけかもしれない。

「さぁ…?私、彼女に興味はないの。どうせ何を言っても無駄だから」
と私がお茶を一口飲んだ途端、
ガチャン!!とジュリエッタの茶器が大きな音をたてた。

ジュリエッタがテーブルを叩いて立ち上がったせいだ。私は立ち上がったジュリエッタを静かに見る。

ジュリエッタは怒りからか、肩が微かに震えている。

「あの女…どうしてあの人はいつも、ああなの?お父様からあれほど大切にされていて…何が不満なの?!」
誰に問うている訳ではないようなジュリエッタの叫びに私は、

「あの人にとってお父様は侯爵夫人でいる為の道具。その役割を終えたお父様にはもう用はないのよ。
私だってそう。王妃でなくなった私にはもう興味はないの。ただ、私は侯爵で…私に養ってもらわきゃいけないから、無下には出来ないだろうけど」
と私は冷静にジュリエッタに言った。

ジュリエッタはそれを聞いて、

「お姉さまは知らないでしょうけど…あの人はとうの昔に私に興味を無くしていたの。色々やらかす私には、彼女を満足させられる程の価値はないと思われて、ずっと居ない者のように扱われて…お父様だけよ…私を人間として扱かってくれたのは」

そう言うとジュリエッタは泣きながら椅子に腰を下ろした。

私はそれを冷めた目で見る。

「自業自得でしょう?貴女が良い人に嫁げるよう努力していたら、あの人も貴女を大切に扱ったんじゃない?
私、貴女の愚痴を聞いている暇はないの。これでも侯爵としての仕事が待ってるのよ」
そう私が言うと、ジュリエッタは、

「…そうね。お姉さまは忙しいもの。だから…私はお父様のお世話をしたいの」
と静かに言った。

今までのジュリエッタだったら私に思い切り噛みついてきていただろう。
少しは成長したようだ。
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