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第95話〈最終話〉
しおりを挟む「でも、こうして私がルース様と何の憂いもなく結婚できるのは、グレイのお陰でもあるわね。…一応、御礼を言っておくわ。ありがとう」
「お前から御礼を言われるなんて…なんか気持ち悪いな。
まぁ、俺もこうして、仕事にありつけたし、お互い様って事で。
これで、兄さんの下で働かなくて良くなったんだ、殿下様々だよ」
…そんなにメルの下で働くのが嫌だったのね…メルはグレイの事が大好きなのに。
「でもさぁ…恋愛小説では、グレイの立ち位置って本来なら『当て馬』役よね。
ヒロインと良い感じになるのに、結局ヒロインはヒーローを選ぶの。
でも読み手は大体、『当て馬派』と『ヒーロー派』に別れるのよ。
…私は断然当て馬派!
いつも小説を読んでいて、『どうして、その人とくっつかないの~。絶対幸せにしてくれるのにぃ』ってムズムズしながら読んでたのよね」
「お前…何言ってんの?それって大前提として俺がお前を好きじゃなきゃ、成り立たないだろ?
俺がお前を好きになるとか…想像でも勘弁してくれよ」
「確かに。いや、何となく学園に入学してからの事がもし小説なら…そういう配役なのかしら?って思っただけよ」
「殿下の『恋人作りたい宣言』も小説が切っ掛けだったけど…お前ら小説に振り回され過ぎじゃないのか?もう読むの禁止にしろよ」
そうね…私も今回の事で恋愛小説を読んで勉強したけれど…事実は小説より奇なり。あまり小説は参考にならなかったものね。
私がグレイと話していると、
「グレイ!!なんで僕より先にアナのドレス姿を見ているんだ!直ぐに立ち去れ!そして、今見たアナの姿を記憶から消すんだ、わかったな?」
…とルース様が大股でこの控え室へ入って来ましたわ。
「はーい、はい。相変わらずですね、殿下も」
そう言ってグレイは肩を竦めると、部屋を出て行きましたわ。…そういえば、ドレスを褒められる事すらありませんでしたわね。
私の側に来たルース様は、
「アナ…何度も言っただろう?グレイとあんまり仲良くするなと。2人がお互いを何とも想っていないことはわかっているが、気が気ではないんだ。…だって小説ならば、あいつは『当て馬』じゃないか」
…私もルース様も小説の読み過ぎですわね。思考が一緒ですわ。
私は思わず可笑しくなって、
「フフフ。私も先ほどそのように思ってしまいましたが…グレイは当て馬ですらありませんわ。
だって、私が好きなのはルース様だけですもの。2人の間で揺れ動くヒロインにはなれそうもありません」
私がそう言ってルース様を見つめると、ルース様は嬉しそうに微笑みました。…やっぱり単純で助かります。
「さぁ、アナ一緒に行こうか。これからもずっと僕の側に居てくれる?」
「もちろんですわ。ルース様が嫌だと言っても、お側を離れないと誓います」
私が言い終わらない内に、ルース様は私を抱き締めました。
……どんなに難しい願いでも、ルース様の願いは全て叶えてみせますわ。
それが私の愛し方ですもの。
私もルース様をぎゅっときつく抱き締めました。
馬鹿な旦那様でも、大好きですよ。
~ Fin~
******************
これにて「馬鹿な婚約者ほど、可愛いと言うでしょう?え?言わない?」は完結いたしました。
最初は短編の予定にしておりましが、10万字を越えてしまいましたので、長編へ変更させていただきます。
最後まで読んで下さいました皆様に感謝申し上げます。
「家族に虐げられていた私は、嫌われ者の魔法使いに嫁ぐ事になりました。~旦那様はストーカーですか?~」
の連載を始めました。
もし宜しければそちらも覗いてみて下さい。
君影草
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