上 下
94 / 95

第94話

しおりを挟む

あれからの学園生活は穏やかに過ぎて行きました。

上位貴族と下位貴族の交流はなくなり、生徒会も上位貴族の生徒達だけに。それには賛否両論ありましたが、いらぬイザコザを起こす事に成りかねないと、新学園長がお決めになったのです。

ルース様は3年間、ギデオン様とダニエル様は2年生になってからの2年間生徒会の役員を努めましたが、あの時のような馬鹿な真似をする方は誰1人としておりませんでした。

3年生にもなると、女生徒の中には卒業を待たずに結婚される方もちらほら。ローズもその内の1人でした。


「ローズが学園から居なくなってしまうのは寂しいわ」

「…そう?隣にべったり張り付いている方がいらっしゃるのだから、寂しいと感じる暇はなさそうよ?
でも、私は寂しいわよ?アナベルとこうして話せなくなるのは」

…学園では、いつもルース様が一緒にいらっしゃるので、なかなかローズと2人で話す機会も減ってしまいましたものね。

結婚式に出席をする旨を伝え、私はローズと別れました。
私とルース様の結婚式は卒業の3日後と決まっておりました。


月日は流れ、卒業パーティーも大きなアクシデントも無く、無事に終わり、私の3年間の学園生活も幕を閉じました。





結婚式の当日は、良く晴れた青空が広がっていました。

「あなた…。あんなに心配だったアナベルが…花嫁になれるなんて…」
お母様……泣いていらっしゃいますけど、言葉は失礼でしたわね?

「本当だな…ミランダ。アナベルの結婚なんて…夢のまた夢だと思っていた時期もあったのに…ミランダ、私の頬をつねってみてくれないか………イタタ…夢じゃないんだな」
お父様も…失礼ですわよね?

「アナベル。おめでとう。これで、僕も心置きなく結婚できるよ。お前が嫁に行かなければ…僕も結婚は諦めようと思っていたんだ。…だってお前が小姑なんて、相手が可哀想過ぎるだろ?」
お兄様…全く出番もなかったのに、ここにきて1番失礼ですわね?

家族との感傷的な語らいの後に、何故かグレイが現れましたわ。

「グレイ、何か用?」

「兄さんが泣きすぎて呼吸が苦しいって医務室へ運ばれた。あの人、自分の結婚式では泣かなかったけどな。なんで、お前の結婚式であれだけ泣けるんだろう…不思議だ」

「メルは大丈夫なの?」

「大丈夫だろ。泣きすぎて死ぬ事はないさ。で、兄さんの代わりに俺がお前に『おめでとう』を言いに来たわけだ」

「…貴方本人からのおめでとうは?」

「ん?じゃあ、おめでとう?」

何故、疑問形なのかしら?

「ところでグレイ…貴方、ルース様の下で働くらしいじゃない」

「まぁな。例の婚約破棄舞踏会の裏方を手伝った時の交換条件だよ」

『婚約破棄舞踏会』って、嫌なネーミングね。
あの時、ルース様が学園長と、メリッサさん、そのお母様との関係を調べているのを手伝ったのがグレイであったらしいのです。その見返りが今のグレイの立場なのだそう。ルース様に聞いた時にはびっくりしました。

「ルース様の『情報屋』をするんでしょう?存在感を消すのが得意な貴方にピッタリね」

「それを言うなら『諜報員』な」

どこがどう違うのかしら?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね

さこの
恋愛
恋がしたい。 ウィルフレッド殿下が言った… それではどうぞ、美しい恋をしてください。 婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました! 話の視点が回毎に変わることがあります。 緩い設定です。二十話程です。 本編+番外編の別視点

変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!

utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑) 妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?! ※適宜内容を修正する場合があります

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~

春野こもも
恋愛
わたくしの名前はエルザ=フォーゲル、16才でございます。 6才の時に初めて顔をあわせた婚約者のレオンハルト殿下に「こんな醜女と結婚するなんて嫌だ! 僕は大きくなったら好きな人と結婚したい!」と言われてしまいました。そんな殿下に憤慨する家族と使用人。 14歳の春、学園に転入してきた男爵令嬢と2人で、人目もはばからず仲良く歩くレオンハルト殿下。再び憤慨するわたくしの愛する家族や使用人の心の安寧のために、エルザは円満な婚約解消を目指します。そのために作成したのは「婚約破棄承諾書」。殿下と男爵令嬢、お二人に愛を育んでいただくためにも、後はレオンハルト殿下の署名さえいただければみんな幸せ婚約破棄が成立します! 前編・後編の全2話です。残酷描写は保険です。 【小説家になろうデイリーランキング1位いただきました――2019/6/17】

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

【完】ええ!?わたし当て馬じゃ無いんですか!?

112
恋愛
ショーデ侯爵家の令嬢ルイーズは、王太子殿下の婚約者候補として、王宮に上がった。 目的は王太子の婚約者となること──でなく、父からの命で、リンドゲール侯爵家のシャルロット嬢を婚約者となるように手助けする。 助けが功を奏してか、最終候補にシャルロットが選ばれるが、特に何もしていないルイーズも何故か選ばれる。

処理中です...