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第92話
しおりを挟む結局、2人の間を取って『ルース様』と呼ぶことになりましたわ。
折衷案ですの。仕方ありません。
休暇中は、今までの分を取り返すかのようにルース様と共に過ごす事になりました。
『恋人はこうして四六時中一緒に居るものだろう?』と仰るのですが、今度はどのような小説に影響されていらっしゃるのでしょうか?
…ユリウスに訊いてみなくてはいけませんわね。
女というのは我が儘なのでしょうか?
追う立場の時にはわからなかったのですが…ルース様、ちょっと…ちょっとだけ、うざい…。
それでも、好きな男性に愛されているというのは、自分の自信にも繋がるものです。
『最近、ますます綺麗になったんじゃない?』とローズに言われて、恋と言うのは人を美しくするものなのだと感じました。
休暇が明けて学園が始まっても、ルース様は私にベッタリですの。
ただ、生徒会にはご一緒できませんので、私は終わるまで、図書室で本を読んだり、勉強したりしております…あ、そうそう。
「この問題がわかんないんだよな」
「この問題もの間違いでしょう?それに、これは昨日も教えたじゃない。覚えてないの?」
こうして試験前にはグレイのお勉強を見てあげたりして過ごしておりますわ。
グレイには色々と助けて貰ったので、借りを作ったような気分なのが、少々不快ですけど。
彼のお陰で今、私はルース様と仲良く過ごす事が出来ていると思えば……何とか我慢出来そうです。
生徒会のあの3人は、なんとも肩身の狭い思いをしているようですが、約半年後には卒業ですもの、それぐらいの罰があってもよろしいと思うのです。皆様、迷惑していらっしゃったんですもの。
ナタリー様は新たに他の方と婚約を結んだようです。少し歳上の方だとか…今度こそ幸せになれると良いですわね。
あ、生徒会が終わったようですわ。ルース様が、私を図書室にお迎えに来て下さいました。
「アンダーソン。またアナに勉強を見てもらっていたのか?甘えてばかりじゃ、アナも大変だろう?少しは自分でやったらどうだ?」
「へいへい。邪魔者は退散しますよ。それでは…この辺で」
グレイは勉強道具をそそくさと片付けると、図書室から出て行きました。
「アナ…いい加減あいつに自分で勉強するように言ったらどうだ?」
…ルース様は私がグレイと一緒に居る事が気に入らないようなのです。こうしていつも苦言を呈してくるのですが、
「ルース様、また『焼きもち』ですか?何度も言うように、グレイは私を嫌っておりますから、心配ありませんよ」
「しかし…面白くないものは面白くない。アンダーソンは…僕の知らないアナを知ってるんだ。それだけでも面白くないんだから」
…ルース様の知らない私を知ってるからこそ、グレイは私を嫌っているのですよ…。
「大丈夫です。私が好きなのはルース様だけですから」
と言うと、ルース様は嬉しそうに微笑みました。…単純で助かります。
「そういえば…1度訊いてみたかったんだが…アナは僕のどこが好きなの?」
と言うルース様の問いに、私は、
「顔です!」
と即答いたしました。
……何やらルース様のお顔が曇ってしまいましたわ…どうしたのかしら?
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