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第70話
しおりを挟むざわざわと生徒の皆様の声が段々と大きくなってまいりました。私の隣に居る殿下も、
「何が始まるんだ?」
と様子を伺っております。
すると、生徒会長であるベルナール様が低く大きな声で、
「グランド侯爵令嬢、ナタリー!」
とご自分の婚約者の名前を高らかに叫びました。
その声を聞いて、ナタリー様はしずしずと壇上にいらっしゃるベルナール様の前に出て行きます。
…一体これは?
すると、後ろに控えていた残りのお2人も、
「カルキン侯爵令嬢、バイオレット!」
「モレッツ伯爵令嬢、ジェニファー!」
とご自分達のご婚約者の名を先程のベルナール様と同じように叫びました。
名前を呼ばれたお2人は顔を見合せ、手を握り合いながらも、先程のナタリー様と同じ様に前に出ます。
フロアにいた人々はその3人のご令嬢から距離を取るように周りへと下がって行きました。
壇上の生徒会役員の皆様VS3人のご令嬢といった様相です。
先程までざわついていた生徒達も今は静まりかえっています。
きっとこれから起こる何かに興味津々で、少しも聞き漏らしたくはないのでしょう。
ナタリー様は俯きそうになる顔をしっかりと上げて、ベルナール様に目を合わせると、
「ベルナール様。このような場で何事でしょうか?今から生徒会長の挨拶ではないのですか?」
と声の震えを隠しながらも、気丈に振る舞っておいででした。
嫌な予感しかしませんわ。
「ナタリー。お前は、ここに居るメリッサ・バジル男爵令嬢を事ある毎に『平民上がりが場違いな所に居るな』とか、『振る舞いがなっていない』など言って苛めていたな!」
とベルナール様は怒りの籠った口調でそう言うとナタリー様を睨み付けた。
ベルナール様の隣では、バジル男爵令嬢が子鹿の様に震えながら、ベルナール様にしがみついております…産まれたてなのかしら?
ナタリー様は、
「わ、私は…当然の事を言っただけです。彼女は下位貴族。上位貴族の校舎で我が物顔で振る舞っていらっしゃったので、注意しただけです」
とはっきりとベルナール様の目を見て答えておりました。
すると後ろに居た、ライアン様が前に出て、
「バイオレット!お前も『婚約者の居る男性に馴れ馴れし過ぎる。弁えろ』とメリッサを脅したそうじゃないか!可哀想にメリッサはいつもいつも生徒会室で泣いていたんだぞ!」
とバイオレット様を睨み付ける。
バイオレット様も負けじと、
「ライアン様!良く考えてみて下さい。婚約者の居る男性の腕をそのように取るなど、あってはならない事。私はそれを注意しただけです!」
と今度はライアン様にしなだれ掛かるバジル男爵令嬢を指差して言い返した。
……え?これって…断罪?
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