68 / 95
第68話
しおりを挟む「今日は皆、大いに楽しんで、学園での思い出を作って欲しい。それでは、舞踏会の開幕!」
学園長の挨拶と共に、皆がパートナーとフロアに出て行きます。その様は中々見応えがありますわ。
流石に全員は1度には踊れない為、上位貴族の面々から…というのが不文律ですの。
「さぁ、アナベル。僕と踊ってくれるよね?」
と殿下が恭しく私に手を差し出して下さいました。私も、
「喜んで」
と笑顔でその手に自分の手を乗せると、フロアへと移動いたします。
殿下とのダンスは練習以外では久しぶりなのですが、だてに5年も婚約者をしているわけでは御座いません。私達の息はピッタリですわ。
「アナベル。今日は僕と一緒に居てくれるよね?」
とダンスを躍りながら、殿下は何故か心配そうです。
「?殿下のお時間の都合が良ければ、もちろんですわ。生徒会のお仕事はよろしいのですか?」
「あぁ、さっきも言ったように親切な者が手伝ってくれている。大丈夫…だと思うよ」
…というより、殿下はバジル男爵令嬢と踊らなくてもよろしいのでしょうか?
ざっと見渡しましたが、生徒会の方々のお姿が見えません。
その代わり、その方々の婚約者の皆様…ナタリー様と、バイオレット様と、ジェニファー様は3人で固まっておいでです。
「殿下の他の生徒会の方々のお姿が見えないようですが…」
「あぁ、あの者達は、生徒会の仕事をサボりがちでな。僕はもう尻拭いするのは止めたんだ。彼らは自分達の仕事が終ってなかったからな。まだやっているのではないか?まぁ、舞踏会には参加するだろう。生徒会長から、挨拶もあるしな」
…確かに、バジル男爵令嬢は暇なの?って思う程には、私に絡んで来ておりました。それに、彼女のお話しが本当なら、殿下と市井のカフェでお茶をしたりしていた筈ですもの。仕事が捗っていなかった事は容易に想像出来ますわ。
曲が終わり、次に下位貴族の皆様がフロアへ出てきました。
私と殿下は、フロアから、飲食のスペースへと下がりました。
「アナベル、何か飲む?喉が乾いただろう?」
「はい。では果実水を…」
私が飲み物を取りに行こうとしますと、殿下は、
「僕が取ってくるから、ここの椅子に座って待ってて。動いちゃダメだよ」
と念を押すと、殿下は飲み物を取りに向かいました。
その背中を見送っていると、椅子の背後から、
「よう。殿下と楽しく過ごしてるみたいじゃねぇか」
と耳慣れた声が聞こえました。振り向くと、
「グレイ!貴方今まで何処にいたの?姿が見えないから、てっきり欠席したのかと思っていたわ」
「ん?まぁ、ある人の代りに仕事してたからな。もうすぐ面白い事が始まるみたいだから、裏方はちょっと休憩。見物に来たって訳だ」
とニヤニヤしていますの。
面白い事って何かしら?
それに…裏方って…普通は生徒会の役員の仕事ではなくて?
63
お気に入りに追加
1,817
あなたにおすすめの小説
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
結城芙由奈
恋愛
浮気ですか?どうぞご自由にして下さい。私はここを去りますので
結婚式の前日、政略結婚相手は言った。「お前に永遠の愛は誓わない。何故ならそこに愛など存在しないのだから。」そして迎えた驚くべき結婚式と驚愕の事実。いいでしょう、それほど不本意な結婚ならば離婚してあげましょう。その代わり・・後で後悔しても知りませんよ?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中
誰も本当のことを言わないので、貴方は自分が地雷男であることに気づけない
麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
「俺は女性から見て高嶺の花の男らしくて、みんな付き合うのを気が引けちゃうんだよね」
兄の紹介で会ったリチャードは、初対面のアルマにそんなことを言うような自意識過剰な男だった。
デートの後はもう二度と彼と会いたくないとうんざりしてしまったアルマは、姉に相談することにした。
全4話
三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します
冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」
結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。
私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。
そうして毎回同じように言われてきた。
逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。
だから今回は。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる