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第66話
しおりを挟む「どうかしら?似合ってる?」
「それはもう!お嬢様はこの国、いえ三国一の美しさですから!」
私の専属侍女であるメリナ。妄信的に私を崇拝してくれていますので、彼女の褒め言葉には気を付けなくてはいけません。
まぁ…グレイの下着を買いに行かせた時は私への信仰が若干下がりましたけど。
それでも十分に私を無条件に褒めてしまう程の信仰は残っております。
で、その三国とは、他に何処と何処なのでしょうね?
舞踏会の当日。私は朝から支度に追われておりました。
こんなに素敵なドレスなのに…舞踏会には1人で参加です。とうとう殿下からは誘われず、最後までローズが『私と一緒に参加しましょうよ』と誘ってくれましたが、もちろん彼女の婚約者に申し訳なくて、お断りしました。ローズの気持ちだけ有り難く頂いておこうと思います。
私は時計を見て、そろそろ出発しなければいけない事に気づきました。
「メリナ、それでは行ってくるわね」
「こんな素敵なお嬢様がたった1人でご参加なんて…私、悔しくて堪りません!」
「殿下もお忙しいのよ。仕方ないわ。会場にはお友達もグレイも居るから、大丈夫よ」
と私は今にもハンカチを食い縛りそうなメリナを安心させるべく声をかけました。
その時、執事から、
「お嬢様。王宮より、お迎えが来ております」
と声が掛かりました。
まさか殿下?
そう思いながら表に向かいますと、
「ユリウス……様?」
「あ、あぁすみません。殿下、今はまだお忙しいみたいで」
と申し訳なさそうに頭を掻きながら、私にお辞儀をするのは、殿下の側近であるユリウス様で御座いました。
「まぁ…わざわざ殿下の代わりに私を迎えに?」
「はい。そういう事です。
なんだか『アンダーソンに負けるわけにはいかない!』とか何とか言ってましたけど…。とりあえず、私がエスコート出来るのは会場の前までです。
さぁ、馬車に乗って下さい。
あ、安心して下さいね、私は御者席に乗りますので」
と私に手を出して下さいました。私もその手を取り、
「わざわざありがとうございます。それではよろしくお願い致します」
とお礼を述べてから、迎えに来た王家の馬車に乗り込りこみました。
馬車の中は私1人。
殿下も毎日お忙しいでしょうに、ドレスを用意して下さっただけでなく、こうして迎えも寄越してくれました…それだけでも私は幸せな気分になることが出来ました。
これで、例え殿下とダンスを踊る事が出来なかったとしても、今回は我慢が出来そうですわ。
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