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第55話
しおりを挟む昼食はその後、話しがそれ以上弾むことなく終了しましたわ…とっても気まずい空間でしたの…私、何かしましたかしら?
明日からは、バジル男爵令嬢の謹慎も解け、学園へ出て来る事になるでしょうし、こうして殿下と昼食をご一緒する事もないはず……そう思っていました。
「殿下…今日はお1人ですの?」
何故か、殿下はまた昼食時、私とグレイのテーブルへやって来て、
「あぁ。今日も一緒に食べて良いかな?」
とにこやかに言いました。
生徒会の方々は?とキョロキョロしてみますが姿はありません。…いえ、皆さん別々に食べていらっしゃるようですし、バジル男爵令嬢様の姿もありませんわね?
殿下は今日はグレイが返事をする前に、私の隣へ腰かけました。…す、素早いですわね。
「あの…バジル男爵令嬢は?」
そう私が訊ねると殿下は、
「この前の王宮での一件で、かなり男爵からお灸を据えられたらしい。生徒会のある放課後以外はこの上位貴族の校舎には立ち入り禁止となったみたいだ」
…元々立ち入り禁止なのでは?なんていう事をここで言うのは野暮というものですわね。空気を読むことにいたしましょう。
でも…殿下は…お寂しいでしょうね…折角、バジル男爵令嬢と懇意にしておられましたのに…。きっと殿下の笑顔の裏には、寂しさを隠しておられるのでしょう。
「…アナベル?何故、僕の顔を泣きそうな顔で見てるの?」
…あ、つい…。殿下のお気持ちを考えて、悲しい気持ちになってしまいましたわ。
「ベル、大丈夫か?どっか具合悪い?」
グレイはそう言うと、テーブルの向こうから手を伸ばし、私の額にそっと手を置きました…と思ったら、隣の殿下がその腕を叩き落としましたわ!
思わず私もグレイも殿下を見てしまいましたわ。
「あ…すまない。しかし、レディにそんな簡単に触れるものではないと思う…僕は…」
と殿下も自分の行動に驚いているようでしたわ。
…何故か向い側でグレイがニヤニヤしているわ…気持ち悪いんですけど。
しかし、殿下が私達と昼食を共にするのは、この日だけではなく……。
「アナベル、今日も一緒に」
「アナベル、今日も一緒で良いよね」
「アナベル、さあ、食堂へ行こう。アンダーソンも待っているだろう?」
「アナベル、アンダーソンを待たなくても、僕と一緒に食べ始めていれば良いじゃないか」
「アナベル、たまには、僕と2人でも良いんじゃない?」
とあれから、毎日一緒なんですけれど…。段々と、グレイを無視するようにもなってきてしまいましたし…そんなにバジル男爵令嬢が居なくて寂しいのでしょうか?
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