上 下
55 / 95

第55話

しおりを挟む

昼食はその後、話しがそれ以上弾むことなく終了しましたわ…とっても気まずい空間でしたの…私、何かしましたかしら?

明日からは、バジル男爵令嬢の謹慎も解け、学園へ出て来る事になるでしょうし、こうして殿下と昼食をご一緒する事もないはず……そう思っていました。


「殿下…今日はお1人ですの?」

何故か、殿下はまた昼食時、私とグレイのテーブルへやって来て、

「あぁ。今日も一緒に食べて良いかな?」
とにこやかに言いました。

生徒会の方々は?とキョロキョロしてみますが姿はありません。…いえ、皆さん別々に食べていらっしゃるようですし、バジル男爵令嬢様の姿もありませんわね?

殿下は今日はグレイが返事をする前に、私の隣へ腰かけました。…す、素早いですわね。

「あの…バジル男爵令嬢は?」

そう私が訊ねると殿下は、

「この前の王宮での一件で、かなり男爵からお灸を据えられたらしい。生徒会のある放課後以外はこの上位貴族の校舎には立ち入り禁止となったみたいだ」

…元々立ち入り禁止なのでは?なんていう事をここで言うのは野暮というものですわね。空気を読むことにいたしましょう。

でも…殿下は…お寂しいでしょうね…折角、バジル男爵令嬢と懇意にしておられましたのに…。きっと殿下の笑顔の裏には、寂しさを隠しておられるのでしょう。

「…アナベル?何故、僕の顔を泣きそうな顔で見てるの?」

…あ、つい…。殿下のお気持ちを考えて、悲しい気持ちになってしまいましたわ。

「ベル、大丈夫か?どっか具合悪い?」

グレイはそう言うと、テーブルの向こうから手を伸ばし、私の額にそっと手を置きました…と思ったら、隣の殿下がその腕を叩き落としましたわ!

思わず私もグレイも殿下を見てしまいましたわ。

「あ…すまない。しかし、レディにそんな簡単に触れるものではないと思う…僕は…」
と殿下も自分の行動に驚いているようでしたわ。

…何故か向い側でグレイがニヤニヤしているわ…気持ち悪いんですけど。

しかし、殿下が私達と昼食を共にするのは、この日だけではなく……。

「アナベル、今日も一緒に」

「アナベル、今日も一緒で良いよね」

「アナベル、さあ、食堂へ行こう。アンダーソンも待っているだろう?」

「アナベル、アンダーソンを待たなくても、僕と一緒に食べ始めていれば良いじゃないか」

「アナベル、たまには、僕と2人でも良いんじゃない?」

とあれから、毎日一緒なんですけれど…。段々と、グレイを無視するようにもなってきてしまいましたし…そんなにバジル男爵令嬢が居なくて寂しいのでしょうか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!

水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。 シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。 緊張しながら迎えた謁見の日。 シエルから言われた。 「俺がお前を愛することはない」 ああ、そうですか。 結構です。 白い結婚大歓迎! 私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。 私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。

ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。 即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。 そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。 国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。 ⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎ ※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!

政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

結城芙由奈 
恋愛
浮気ですか?どうぞご自由にして下さい。私はここを去りますので 結婚式の前日、政略結婚相手は言った。「お前に永遠の愛は誓わない。何故ならそこに愛など存在しないのだから。」そして迎えた驚くべき結婚式と驚愕の事実。いいでしょう、それほど不本意な結婚ならば離婚してあげましょう。その代わり・・後で後悔しても知りませんよ? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中

誰も本当のことを言わないので、貴方は自分が地雷男であることに気づけない

麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
「俺は女性から見て高嶺の花の男らしくて、みんな付き合うのを気が引けちゃうんだよね」 兄の紹介で会ったリチャードは、初対面のアルマにそんなことを言うような自意識過剰な男だった。 デートの後はもう二度と彼と会いたくないとうんざりしてしまったアルマは、姉に相談することにした。 全4話

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。 【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。

処理中です...