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第47話

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「アナベル!お見舞いに来てくれたんだ…!」

あら?意外とお元気そう…安心しましたわ。

「殿下、お加減はいかがですか?昨日もお疲れのご様子でしたので、心配いたしましたわ」

「あ…うん。最近忙しかったからね。ちょっと疲れが出たみたいだ。でも、もう大丈夫。明日は学園に行けるよ」

「あまり無理はなさらないで下さいね。あの…これ。殿下が前にお好きだと仰ってた飴玉です。バターの」

「あぁ!これ!昔、美味しいって言ったの覚えててくれたんだね。どこのお店で買ったの?って訊いても教えてくれなかったから…」

「これ…私には…苦い想い出ですの」

「苦い想い出?どうして?」

「これ…実は私が作ったんです。殿下の婚約者になって…きっと殿下は王宮でいつも美味しいものを食べていらっしゃるから、どんな物を差し上げても喜んでいただけないのではないかと。
それで、私が好きだった飴玉をと思って。作り方を教わって…初めて人の為に作ったんです」

「それの…どこが苦い想い出?」

「ここからが…私の苦い想い出です。
私、殿下を驚かせたくて、誰にもこれを持っている事を言わずに、殿下に直接差し上げてしまって。毒味も済ませず。
殿下は私が渡した飴を美味しそうに食べて下さいました。でも、周りの者は皆、驚いていましたの。
殿下に何事もなかったから良かったものの…その後で私は王妃様にこっぴどく叱られてしまいました…。当たり前でしたわ。
子どもの浅はかな考えだということで…なんとか許して頂けましたけど。
でも!今日は大丈夫ですよ!ちゃーんと、先に毒味して頂きましたし、ほら…私が先に一粒食べます」

そう言って、私は飴玉を口に入れてみせました。

あの日の事は、忘れた事はありません。
王妃様からは…折檻を受けました。
これは…お父様にも、お母様にも…もちろん殿下にも誰にも言った事はありません。

「そんな…。そんな事が。アナベルが僕の命を狙う訳ないじゃないか」

「私にそのつもりがなくても…決まりは決まりです。殿下に何かあったら一大事ですもの」

「………王族とは…堅苦しいものだな。
しかし…これは…アナベルの手作りだったのか…それでどこの店で売ってるのか教えて貰えなかったわけだ」

そう言って殿下は飴玉を一粒口へ運びました。

「うん…やっぱり美味しい。優しい味だ」

「ふふっ。素朴で美味しいですよね。私もこの飴玉が子どもの頃から大好きなのです」

「誰に作り方を教わったの?」

「あぁ。これは、グレイ…アンダーソン伯爵家のメイド長に教わったのです。レシピを書いて貰って」

「アンダーソン……伯爵家の…。そうか…」

あれ?殿下…また元気がないような…。
ハッ!また体調が?!
そう思っていましたら…。

「殿下!殿下のご学友と仰られるご令嬢が王宮の門の所で、殿下のお見舞いに来たと…その…暴れておりまして…」

……暴れてる?…え?誰が?
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