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第40話

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「貴女ねぇ!私のルシウスを奪っておいて、ルシウスが他の女とイチャイチャしてるのを黙認。
自分は他の男とイチャイチャ。
どういう事なのよ!私が…私がルシウスの婚約者に選ばれていたら、こんな事にはならなかったわ!」

バイオレット様が掴みかからんばかりの勢いで私に詰め寄りますけど…ちょっと聞き捨てなりませんわね。
私は、広げていた扇をパチンと音が鳴るように閉じると、

「バイオレット様。今の貴女のお言葉…誰にものを言ってるの?
私は公爵令嬢。貴女は侯爵令嬢。
これじゃあバジル男爵令嬢の事を言えませんわね。
それに殿下を呼び捨てにするのは…殿下の許可を得てからですわよ?
貴女は幼馴染みとはいえ…殿下にそれを許可されていないでしょう?
お茶会で、貴女が殿下のお名前を呼んだ時、殿下が何とおっしゃったか覚えていらっしゃらないの?」

「お、覚えております」
バイオレット様の顔色……人間って本当に青くなるのね。

「『どうして、急にそんな風に呼ぶの?今までもそう呼んだ事ないよね。ここは皆平等にしなければいけない場だよ?弁えようね』と言われたでしょう?
心の中では…どうぞお好きに呼んだら良いわ。でも、口に出すのは、不敬だわ」

あのお茶会での殿下のセリフは一字一句覚えてるのよ?
一目惚れした令嬢の脳ミソを舐めないでいただきたいわ。
…読者の皆様…引かないでくださいまし。

「で、でもあの女は…殿下を呼び捨てに…」

「それは、殿下が許可しています。問題ないでしょう?貴女と違って」

バイオレット様はノックアウトされたかのように椅子に座り込みましたが…まだよ?

「それに…自分が殿下の婚約者だったら、こんな事にはならなかった…でしたからしら?
ちょっと…笑わせないでいただきたいわ。
ご自分の婚約者…あ、妄想のではなく現実のですわよ?
きっと貴女の妄想の中では婚約者は殿下なのでしょうけど。
現実の婚約者の方…コリンズ伯爵令息様。…彼もバジル男爵令嬢と…貴女の言葉を借りるならイチャイチャしてらっしゃるのでは?
そんな貴女が殿下の婚約者なら…ってどのお口が言ってるのかしら?」

バイオレット様はすっかり項垂れてしまいましたわ。…ふん!


そしてその様子を見ていたお2人にも言いたい事が御座いますの。

「さて、貴女達は私にどうしてもらおうと思ったの?
バジル男爵令嬢に注意をして欲しい?
それなら、ご自分でどうぞ。貴女達なら、身分的にも問題ないでしょう?人を当てにしないでくださる?
殿下が側にいらっしゃるから皆様注意が出来ないのは、もちろん理解していますわ。
でも、バジル男爵令嬢が1人になる時間もあるでしょう?四六時中一緒な訳ではありませんもの」

私がお2人に向き合うと、ナタリー様は、

「…殿下が、あの女に盗られた時、アナベル様が泣くはめになっても、私達は可哀想だとは思いませんわ。はっきり言えば自業自得。その時に後悔しても、知りませんからね!」

と捨て台詞を吐いて、座り込んでいるバイオレット様を引きずるように出ていきましたわ。…怒っていらっしゃいましたね。まぁ、…仕方ないですわ。

残ったジェニファー様も、私に会釈をすると、2人の後を追ってサロンを出ていきました。

これで、私が悪役令嬢にならなくて済むはずですわ。

…国外追放は嫌ですもの。
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