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第22話

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確かに…グレイの言う通りかもしれません。私はついつい殿下の事になると、周りが見えなくなってしまうと言いますか…。

殿下のお願いを叶える事ばかりに重きを置いて、自分の立場や評判を考えていませんでした…反省ですわね。

すると、向かいに座ったグレイが驚いたように、

「おい、おい、こっちに来たぞ!」
と、私の方に身を乗り出して小声で慌てたように言ってきます。

私は、グレイの目線の先を確認すると、張り付いた様な笑顔で、殿下とお供の2人が私達の座るテーブルに近づいて来ているのが見えました。

……何故?そして、何だか殿下の笑顔が怖い…。


私達は黙って近づく殿下を迎えるように立ち上がって、礼をとります。


「楽にしていいよ」
そう言われて私達は頭を上げますが…殿下の横にいらっしゃるお2人も困惑気味ですわ…。

「殿下…いかがなさいました?」

「うん?良ければ僕達も昼食を一緒にと思って。2人共、まだ途中みたいだし、席も詰めれば後3人ぐらい座れるだろう?構わないかな?」

構わないかな?と一応疑問形ですが…これを断れる人物は、この学園には存在しませんわよね?

私が、

「も、もちろんで御座います」
と答えると、向かい側でグレイが(おい、おい勘弁してくれよ~)という目で見てくるんですけど…なら、自分で断れば?出来るの?と、言いたいですわ。

殿下は私の答えを予想していたように、
私の隣の席に座りましたわ。

後の2人は、グレイを挟むように座っていて、グレイはキュッと細くなって、何とも言えない顔をしていますわ…。ごめんね…グレイ。


殿下は、そんな微妙な顔をしたグレイに向かって、

「君は……?」

「お…私はグレイ・アンダーソンと申します」

「アンダーソン伯爵の御子息かな?」

「はい。次男になります」

「なるほど。で、アナベルとの関係は?」

チラリと私を見るグレイ。今はギデオン様も、ダニエル様もいらっしゃるので、『恋人』だと言うのは得策ではないでしょう。

「ベル…アナベル嬢のです」

「はとこ…?という事は親戚って事だね」

「はい」

「そうか…あぁ、食事を邪魔して悪かった。続けてくれ」

殿下はグレイの素性を知って納得したのか、自分もランチを食べ始めました。

それを見たお2人も食べ始めましたけど…グレイは緊張からかしら?食欲をすっかり無くしてしまったようですわ。
私も、なんとなく居心地の悪さを感じてしまいます。

食事の間も殿下はグレイに色々と質問していらっしゃいましたけど…なんだか…尋問みたいでしたわ。

そんな微妙な昼食が終わると、殿下は

「さぁ、アナベル、教室へ戻ろう。では、アンダーソン殿、また」
といって、私の手をひいてさっさと教室へと向かいます。

私は振り返って、その場に残されてポカーンとした顔のグレイに、片手でごめんのジェスチャーをして、殿下に手を引かれるまま、食堂を後にすることになりました。
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