22 / 95
第22話
しおりを挟む確かに…グレイの言う通りかもしれません。私はついつい殿下の事になると、周りが見えなくなってしまうと言いますか…。
殿下のお願いを叶える事ばかりに重きを置いて、自分の立場や評判を考えていませんでした…反省ですわね。
すると、向かいに座ったグレイが驚いたように、
「おい、おい、こっちに来たぞ!」
と、私の方に身を乗り出して小声で慌てたように言ってきます。
私は、グレイの目線の先を確認すると、張り付いた様な笑顔で、殿下とお供の2人が私達の座るテーブルに近づいて来ているのが見えました。
……何故?そして、何だか殿下の笑顔が怖い…。
私達は黙って近づく殿下を迎えるように立ち上がって、礼をとります。
「楽にしていいよ」
そう言われて私達は頭を上げますが…殿下の横にいらっしゃるお2人も困惑気味ですわ…。
「殿下…いかがなさいました?」
「うん?良ければ僕達も昼食を一緒にと思って。2人共、まだ途中みたいだし、席も詰めれば後3人ぐらい座れるだろう?構わないかな?」
構わないかな?と一応疑問形ですが…これを断れる人物は、この学園には存在しませんわよね?
私が、
「も、もちろんで御座います」
と答えると、向かい側でグレイが(おい、おい勘弁してくれよ~)という目で見てくるんですけど…なら、自分で断れば?出来るの?と、言いたいですわ。
殿下は私の答えを予想していたように、
私の隣の席に座りましたわ。
後の2人は、グレイを挟むように座っていて、グレイはキュッと細くなって、何とも言えない顔をしていますわ…。ごめんね…グレイ。
殿下は、そんな微妙な顔をしたグレイに向かって、
「君は……?」
「お…私はグレイ・アンダーソンと申します」
「アンダーソン伯爵の御子息かな?」
「はい。次男になります」
「なるほど。で、アナベルとの関係は?」
チラリと私を見るグレイ。今はギデオン様も、ダニエル様もいらっしゃるので、『恋人』だと言うのは得策ではないでしょう。
「ベル…アナベル嬢のはとこです」
「はとこ…?という事は親戚って事だね」
「はい」
「そうか…あぁ、食事を邪魔して悪かった。続けてくれ」
殿下はグレイの素性を知って納得したのか、自分もランチを食べ始めました。
それを見たお2人も食べ始めましたけど…グレイは緊張からかしら?食欲をすっかり無くしてしまったようですわ。
私も、なんとなく居心地の悪さを感じてしまいます。
食事の間も殿下はグレイに色々と質問していらっしゃいましたけど…なんだか…尋問みたいでしたわ。
そんな微妙な昼食が終わると、殿下は
「さぁ、アナベル、教室へ戻ろう。では、アンダーソン殿、また」
といって、私の手をひいてさっさと教室へと向かいます。
私は振り返って、その場に残されてポカーンとした顔のグレイに、片手でごめんのジェスチャーをして、殿下に手を引かれるまま、食堂を後にすることになりました。
67
お気に入りに追加
1,840
あなたにおすすめの小説
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね
さこの
恋愛
恋がしたい。
ウィルフレッド殿下が言った…
それではどうぞ、美しい恋をしてください。
婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました!
話の視点が回毎に変わることがあります。
緩い設定です。二十話程です。
本編+番外編の別視点
変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!
utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑)
妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?!
※適宜内容を修正する場合があります
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~
春野こもも
恋愛
わたくしの名前はエルザ=フォーゲル、16才でございます。
6才の時に初めて顔をあわせた婚約者のレオンハルト殿下に「こんな醜女と結婚するなんて嫌だ! 僕は大きくなったら好きな人と結婚したい!」と言われてしまいました。そんな殿下に憤慨する家族と使用人。
14歳の春、学園に転入してきた男爵令嬢と2人で、人目もはばからず仲良く歩くレオンハルト殿下。再び憤慨するわたくしの愛する家族や使用人の心の安寧のために、エルザは円満な婚約解消を目指します。そのために作成したのは「婚約破棄承諾書」。殿下と男爵令嬢、お二人に愛を育んでいただくためにも、後はレオンハルト殿下の署名さえいただければみんな幸せ婚約破棄が成立します!
前編・後編の全2話です。残酷描写は保険です。
【小説家になろうデイリーランキング1位いただきました――2019/6/17】
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
【完】ええ!?わたし当て馬じゃ無いんですか!?
112
恋愛
ショーデ侯爵家の令嬢ルイーズは、王太子殿下の婚約者候補として、王宮に上がった。
目的は王太子の婚約者となること──でなく、父からの命で、リンドゲール侯爵家のシャルロット嬢を婚約者となるように手助けする。
助けが功を奏してか、最終候補にシャルロットが選ばれるが、特に何もしていないルイーズも何故か選ばれる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる