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第7話

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「アナベル、昼食を一緒に食べよう」

あぁ、朝見ても、昼見ても、殿下はお美しいですわね。

それに引き換え、今日の私のコンディションは絶不調。

昨日、学園の帰りに本屋に寄って、恋愛小説を片っ端から買って、昨晩は寝る間も惜しんで『恋人とはなんぞや』についてお勉強しておりましたの。
それが祟って、今朝、私の顔に立派な隈が出来ていましたのよ?朝から、気絶しそうでしたわ。
そんな顔を殿下の前に晒せと?
そんな事をしたら、殿下に私、嫌われてしまうかもしれませんわ。

殿下が私に恋愛感情がない事など、婚約者になった当初から、わかっておりました。

少し、私が殿下の婚約者になった経緯を皆様にはお話しておきたいと思います。

私は幼少の頃…少々やんちゃでございましたの。父も母も、それはそれは私の行く末を心配しておりました…。

ー回想ー

アナベル父(ハリー・クラーク公爵):『アナベルは…嫁の貰い手がないかもしれない…』

アナベル母(ミランダ・クラーク公爵夫人):『あなた。公爵家の権力を最大限に使っても無理なのですか?あの娘は、その…少々お転婆ですけれども、愛らしい見た目をしております。騙されて下さる方も中にはいらっしゃるかもしれません。諦めないで!』

アナベル父:『私だって、諦めたくはないが…、ペンを握るより、剣を握っている方が好きだし、馬車に乗るより、馬に乗りたいと言い、虫でも爬虫類でも、両生類でも手掴みだ。…アナベルの相手が出来るのはメルヴィルぐらいしかいないだろう』

アナベル母:『メルヴィルは最終手段よ。メルヴィルなら、アナベルを喜んで貰ってくれるでしょうけど…あの2人が一緒に居ると禄な事がないわ。この前だって、アンダーソン伯爵領にあるボート小屋を吹き飛ばしたのよ?あの2人が結婚なんてしたら…伯爵家が半壊してもおかしくないわ』

アナベル父:『半壊で済めば良いな。どうしてアナベルは…あんな風に育ったんだろうな…兄のフリオは驚く程に大人しいのに…』

アナベル母:『フリオの存在感の無さも異常ですけどね。私はお茶会に連れて行って、2回も連れて帰るのを忘れてしまいましたもの』

アナベル父:『ミランダ…それはそれで母親として問題だ』

アナベル母:『そんな事は百も承知です。しかし、今問題なのは、アナベルですわ。あの娘が何処にも嫁がないと言うことは、一生、私達が面倒を見なくてはならなくなるのですよ?フリオにだっていつの日か結婚する相手がこの公爵家に嫁いで来るのです。その屋敷にアナベルが居るとなると…』

アナベル父:『離縁と言われかねないな。フリオが』

アナベル母:『修道院に莫大な寄付をしたとしても、アナベルを受け入れてくれる所があるかどうか…』

2人はため息をつく。

そんなある日、アナベルの運命を左右する、王宮からの招待状が届いたのである。
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