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56話
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私が答えようと口を開いたその時、
「ローランド様!こちらに来ては行けないと何度も言われているでしょう?」
とロータス様がこちらに走り寄ったかと思うとその子どもを抱っこした。
すると、その後ろから
「ロータス、その手を離しなさい!誰の許可を得てローランドに触れているのです?」
という女性の声が聞こえた。
ギョッとしたロータス様は直ぐ様その子どもを地面へと降ろす。私もその声の方へと顔を向けた。
「………王妃陛下……?」
と私が小さな声で呟くより早く、ロータス様始め私の周りの護衛も、この男の子に付いてきた護衛や侍女も一斉に頭を下げた。
私も一足遅れて頭を下げようとすると、そのローランドと呼ばれた男の子は泣きそうな顔をして、私の後ろに回り込むとワンピースのスカートの影に隠れた。
そっと覗かせた顔が今にも泣き出しそうで、私は堪らず片手を伸ばし、その子の肩を抱いた『大丈夫だよ』と伝えたくて。
その子が小刻みに震えているのが、私の手のひらを通して伝わる。
……この子は……王妃陛下を恐れているのだわ。そして、さっき呼ばれた名を察するに……
「そこの女。我が息子から手を離しなさい。さもなくばその腕を切り落としますよ」
と静かながらも凄味のある声で王妃陛下が私に近付きながらそう告げる。
その声を聞いた男の子……ローランド王子は私のスカートをますます強く握りしめた。
近付いて来る王妃陛下と私の間にすかさずロータス様が割り込んだ。
「お言葉ですが妃陛下、ここは王太子殿下の宮。そしてここは王太子殿下のお庭でございます。ここへ来る事はご遠慮願いたいと、殿下からも申し伝えられている筈」
と言うロータス様の頬を妃陛下は思いっ切り扇で張った。
『バシン!』と言う音が響き、その音にローランド王子はますます震え始める。
ロータスさまの頬は扇で傷つけられたのか、薄っすらと血が滲んでいた。
王妃陛下は、
「本来なら、ここはローランドの物。薄汚いあの女の血を引く者には相応しくありません。ロータス。貴方、死にたいの?」
と少し目線を下げていたロータス様の顎を扇でクイッと上に向けた。
「何と言われましても、王太子殿下はエリオット様、その人でございます。ここで自由に出来るのは殿下だけ。お引き取り願いたい」
とロータス様は今度は妃陛下の目を真っ直ぐに見て、そう答えた。
妃陛下は面白くない……といった風に扇をロータス様の顎から離すと、『パチン!』と1度打ち鳴らしてから、今度は私を真っ直ぐに見た。
私は片手にアイザックを抱き、もう片方の手でローランド王子を私の背後にそっと押した。
私も彼女から目を離さない。離せば負けの様な気がしていた。
妃陛下は、
「お前が……。なるほど。生意気そうな顔だこと。薄汚いあの女の子どもにはピッタリね。身分の低い者同士お似合いだわ」
と扇で口を隠して笑う。その笑いが私や殿下を嘲るものである事は明白だった。
「ローランド様!こちらに来ては行けないと何度も言われているでしょう?」
とロータス様がこちらに走り寄ったかと思うとその子どもを抱っこした。
すると、その後ろから
「ロータス、その手を離しなさい!誰の許可を得てローランドに触れているのです?」
という女性の声が聞こえた。
ギョッとしたロータス様は直ぐ様その子どもを地面へと降ろす。私もその声の方へと顔を向けた。
「………王妃陛下……?」
と私が小さな声で呟くより早く、ロータス様始め私の周りの護衛も、この男の子に付いてきた護衛や侍女も一斉に頭を下げた。
私も一足遅れて頭を下げようとすると、そのローランドと呼ばれた男の子は泣きそうな顔をして、私の後ろに回り込むとワンピースのスカートの影に隠れた。
そっと覗かせた顔が今にも泣き出しそうで、私は堪らず片手を伸ばし、その子の肩を抱いた『大丈夫だよ』と伝えたくて。
その子が小刻みに震えているのが、私の手のひらを通して伝わる。
……この子は……王妃陛下を恐れているのだわ。そして、さっき呼ばれた名を察するに……
「そこの女。我が息子から手を離しなさい。さもなくばその腕を切り落としますよ」
と静かながらも凄味のある声で王妃陛下が私に近付きながらそう告げる。
その声を聞いた男の子……ローランド王子は私のスカートをますます強く握りしめた。
近付いて来る王妃陛下と私の間にすかさずロータス様が割り込んだ。
「お言葉ですが妃陛下、ここは王太子殿下の宮。そしてここは王太子殿下のお庭でございます。ここへ来る事はご遠慮願いたいと、殿下からも申し伝えられている筈」
と言うロータス様の頬を妃陛下は思いっ切り扇で張った。
『バシン!』と言う音が響き、その音にローランド王子はますます震え始める。
ロータスさまの頬は扇で傷つけられたのか、薄っすらと血が滲んでいた。
王妃陛下は、
「本来なら、ここはローランドの物。薄汚いあの女の血を引く者には相応しくありません。ロータス。貴方、死にたいの?」
と少し目線を下げていたロータス様の顎を扇でクイッと上に向けた。
「何と言われましても、王太子殿下はエリオット様、その人でございます。ここで自由に出来るのは殿下だけ。お引き取り願いたい」
とロータス様は今度は妃陛下の目を真っ直ぐに見て、そう答えた。
妃陛下は面白くない……といった風に扇をロータス様の顎から離すと、『パチン!』と1度打ち鳴らしてから、今度は私を真っ直ぐに見た。
私は片手にアイザックを抱き、もう片方の手でローランド王子を私の背後にそっと押した。
私も彼女から目を離さない。離せば負けの様な気がしていた。
妃陛下は、
「お前が……。なるほど。生意気そうな顔だこと。薄汚いあの女の子どもにはピッタリね。身分の低い者同士お似合いだわ」
と扇で口を隠して笑う。その笑いが私や殿下を嘲るものである事は明白だった。
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