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44話

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何故か王宮に連れて行かれた私とアイザック。

王宮に着いた殿下は馬を降りると私を抱えて降ろした。

「エリオット様!こんな時に、どちらへ行かれていたのですか!?」
と駆け寄って来たのは、あの時、うちの宿屋に一緒に泊まった近衛の副騎士団長だった。私にも見覚えがある。

彼は私とアイザックをチラリと見る。

「お前達が無能だからだ。時間がないのだから、俺が行くしかないだろう」
と言いながら、殿下は歩みを止めない。

殿下の胸にはアイザックが抱かれ、私の荷物は二つ共、殿下の手の中だ。
私も仕方なくその後を付いて歩くが、殿下の足が長すぎる為か、私の足が短いのか、付いて行くには小走りになるしかない。

殿下が通ると王宮の使用人達はさっと道を開ける為に脇へ避けて頭を下げている。……が、チラチラと私を見ているのを何となく感じる。

殿下はそんな事はお構い無しに、ずんずんと先を歩く。その隣には先程の副団長が、これまた小走りで並走していた。

「で、この方が?」
とアイザックを見ながら副団長が尋ねると、

「そうだ。とりあえず俺の部屋に行く。誰か適当な侍女を寄越せ」
と殿下が副団長に言うと、

「ハッ!」
と言った副団長は別の場所へと走って行く。

私は今聞こえた言葉に慌てて、

「あの……!どういう意味なのか説明を……!殿下の部屋って……」
と言う私の言葉を無視して殿下はどんどんと先へ行く。私は混乱しながらも付いていくしか無かった。


殿下が歩みを止めたのは、大きな扉の前だった。

「ここだ」
と言った殿下が扉を開く。扉の側に居た護衛も頭を下げながらも、アイザックを抱く殿下に目を丸くしていた。

開かれた扉の先には扉の豪華さに比べると質素な部屋が現れた。
しかし、私の足は前に進まず、そこで立ち止まる。

「どうした?入れ」
と部屋に入った殿下が振り返って私にそう言う。

「……部屋に入ったら、アイザックを返して貰えますか?」
と睨む私に、

「約束する」
と言って殿下は顎で私に入室を促す。
私は意を決して部屋へと一歩踏み出した。

部屋へ入ると殿下はアイザックと自分を縛っていた紐を解くと私へとアイザックを差し出した。

私は手を伸ばしてアイザックを受け取ると、思いっきり抱きしめた。
その姿を見た殿下は、

「……とりあえず説明しよう」
と言って私の肩を抱くと、長椅子の方へと私を連れて行った。


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