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18話
しおりを挟む翌日、私はお休みを貰い辻馬車に乗って隣町までやって来た。
ここなら、宝石やアクセサリーを買い取ってくれる店があると聞いたからだ。
私はその店を見つけて、恐る恐る入って行った。
私が店主を探してキョロキョロとしていると、周りの客が話している会話が耳に入ってきた。
「そういえば、隣国との小競り合いは決着がついたらしいね」
「そうみたいだ。結局、我が軍の勝利……いや殿下の勝利と言ったところか。
あとの諸々の処理は陛下がやるんだろ。危ない所は殿下にさせて、いつも陛下は良いとこ取りだ」
「自分は全く動かず指図するだけで国が一つ手に入るんだ。儲けもんだな」
「やっぱり隣国は支配下に置かれるのか?無駄な戦いを挑んだもんだ」
客の会話から、我が国が勝利した事が伺える。
勝利宣言は出されていないが、憂いはなくなったという事か。
……っていうか、国王陛下ってあまり人気がないのね。貴族の中ではそんな話を聞いた事はなかったが、平民はあまり良い感情を持っていないような口ぶりだった。
すると、
「お嬢さん、何か御用ですかな?」
と店の奥から出てきた白髪の紳士が話しかけてきた。
「あ、あの……こちらのご主人ですか?」
「では自己紹介から。この店の店主、トーマスと申します」
「ご、ご丁寧にどうも。クレアと申します。あの……こちらで宝石やアクセサリーを買い取っていただけると聞いたので」
「ええ。物によりますがね。まずはお品物を鑑定させていただいてから……になりますが」
「ええ。もちろん、そうですよね」
「まずはクレアさんがお持ちいただいた物を見せていただきましょうか?」
とモノクルを掛けたにこやかな店主はトレーを差し出した。これに置けという事だろう。
私は持って来たネックレスをそのトレーにそっと置いた。
「ほう。これは見事だ。宝石にも傷はないし、台座の細工も素晴らしい。………しかし、どうしてこんな物を貴女が?」
と店主の顔から笑顔が消えてその表情は険しくなった。
私の姿を頭のてっぺんからつま先まで確認すると、店主は
「失礼ですが、これをどこで手にいれたのです?」
と刺々しい物言いで私に問う。
私は今日の自分の身なりを思い出す。
秋口になり少し肌寒い日が増えてきた為、私は薄手のワンピースにカーディガンを羽織った格好だ。しかしどれも安物で、こんなネックレスを持っているには似つかわしくない。
なるほど。こんな私が何故コレを持っているのか……。私は今、ネックレスは盗んだ物ではないかと疑われているという事か。
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