乙女ゲームに転生しましたが、パラ上げで心が折れそうです。

初瀬 叶

文字の大きさ
上 下
42 / 43

ヒロインの存在意義

しおりを挟む
 するとモー・キンムーが、ラー・キンムーに向かって言った。

「あれは金になるぜ、兄貴」

 ラー・キンムーが口の端を上げてうなずいた。

「そうだな。いい土産になりそうだ」

 俺は、そんなふたりを鼻でせせら笑った。

「ふん、俺からこれを奪い取れると思っているのか?」

 ラー・キンムーが恍惚の表情を浮かべて言った。

「お前はつまらん小僧だが、ひとつだけ素晴らしいことがある。それは、お宝を持っているということだ!」

 ラー・キンムーが言うなり、凄まじい勢いで俺に襲いかかってきた。

 俺はすぐに蒼龍槍を後ろ手に引いて構え、間合いをはかる。

 ここだ!

 俺は力強く蒼龍槍を前に出す。

 と、ラー・キンムーが待っていたかのように上に向かって跳び上がった。

 蒼龍槍が空を切る。

 と、その後ろにモー・キンムーが!

 上からラー・キンムー、目の前にはモー・キンムーという二段構えの攻撃が迫る。

「死ねい!」

 ラー・キンムーが上から真っ直ぐ指を伸ばした手刀でもって、俺を指し貫こうと試みる。

 俺はすんでのところでそれを、ダッキングしてかわした。

 頭のすぐ上をラー・キンムーの手刀が通り過ぎる。

 だが目の前にはモー・キンムーが、俺の動きを予測していたかのように下段蹴りを繰り出していた。

 俺はその足を、蒼龍槍で薙ぎ払おうと渾身の力でもって横殴りした。

 すさまじい衝撃音と共に、モー・キンムーの右足が砕けた。

 モー・キンムーがたまらず絶叫した。

「おのれ!」

 弟の仇とばかりに、ラー・キンムーが踵を返して俺に襲い掛かる。

 俺はすぐさま立ち上がり、振り向きざまに蒼龍槍を振るった。

 再びの衝撃音が鳴り響く。

 蒼龍槍はラー・キンムーの脇腹にめり込み、肋骨数本を葬った。

 ラー・キンムーのけたたましい悲鳴が上がる。

 俺は肺腑の中の空気を一気に吐き出した。

「ふう~」

「やりおるの。さすがじゃ」

 俺の背から、バーン翁が語りかけていた。

 俺は振替し、肩をすくめてみせた。

「なあに、大したことじゃないさ」

 バーン翁が相好を崩した。

「そうかそうか。だがなかなかの相手だったとは思わないか?」

 これには俺もうなずくしかなかった。

「ああ。こいつら、Sランクだと思う」

 バーン翁がうなずいた。

「うむ。野良のSランクじゃな」

「Sランクってのは、数が少ないんじゃなかったのか?」

 俺が抗議するように言ったことで、バーン翁が笑みを見せた。

「わしのせいじゃないんだから、文句を言うな」

「でもさあ、三人もだぜ?たぶんSランクっていっても、ぎりぎり合格ってところだと思うけど、それにしてもだぜ」

「まあそれに関しては、わしも興味津々じゃ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

魅了の魔法を使っているのは義妹のほうでした・完

瀬名 翠
恋愛
”魅了の魔法”を使っている悪女として国外追放されるアンネリーゼ。実際は義妹・ビアンカのしわざであり、アンネリーゼは潔白であった。断罪後、親しくしていた、隣国・魔法王国出身の後輩に、声をかけられ、連れ去られ。 夢も叶えて恋も叶える、絶世の美女の話。 *五話でさくっと読めます。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

邪魔しないので、ほっておいてください。

りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。 お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。 義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。 実の娘よりもかわいがっているぐらいです。 幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。 でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。 階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。 悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。 それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

あなたを忘れる魔法があれば

美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。 ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。 私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――? これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような?? R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

その出会い、運命につき。

あさの紅茶
恋愛
背が高いことがコンプレックスの平野つばさが働く薬局に、つばさよりも背の高い胡桃洋平がやってきた。かっこよかったなと思っていたところ、雨の日にまさかの再会。そしてご飯を食べに行くことに。知れば知るほど彼を好きになってしまうつばさ。そんなある日、洋平と背の低い可愛らしい女性が歩いているところを偶然目撃。しかもその女性の名字も“胡桃”だった。つばさの恋はまさか不倫?!悩むつばさに洋平から次のお誘いが……。

処理中です...