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嫌な予感
しおりを挟む先輩とのデート当日。
前日から張り切って戦闘服を選び、これぞ乙女ゲームのヒロインなり!という程に可愛くなった(自画自賛していくスタイル)私は、張り切って待ち合わせ場所に出掛けた。
張り切り過ぎて、約束の時間の30分も前に着いてしまった。
…またもや、恋の駆け引きなど出来ない私。
ここで、少しぐらい男性を待たせた方が良かったのかもしれない…なんて反省をしながらも浮き足立っていた。
多分3㎜ぐらい浮いていたのではないかと思う。未来のネコ型ロボットの様に。
しかし、そんな浮き足立っていた私を地下へと、めり込ませる程の衝撃的な光景が、今、まさに目の前で繰り広げられていた。
約束の時間の5分程前に先輩は現れた。
「ごめん、ごめん。もしかして待たせちゃったかな?
あ、紹介するね。こちら、武田 優羽さん。
実は君が今度入学する大学の学生なんだ。学園生活の事とか、勉強の事とか、気になる事があったら何でも質問すると良いよ」
と言う先輩の隣で微笑む、可愛らしい女性が私に、
「はじめまして。私、武田 優羽って言います。よろしくね。坂崎 花音ちゃんよね?あ、花音ちゃんって呼んでも良い?」
と笑顔で挨拶するが…耳に入ってこない。
え?何コレ?どういう事?
私が驚いていると、
「え?もしかして渉、私が此処に来る事、花音ちゃんに言ってなかったの?」
と親しげに先輩の腕を掴む武田…とかいう人。
え?何コレ?どういう事?(2回目)
「あ!ごめん!坂崎さん。僕、言ってなかったっけ?友達連れて来るって」
という先輩の言葉に、
「友達?」
と私はつい期待を込めて聞き返した。
「うん。彼女さ、僕がバイトで家庭教師をしている子の姉さんなんだ。たまたま同じ歳だし、趣味も似てて…仲良くなったんだよ」
と、武田ホニャララさんの紹介をする先輩の顔は……何故か少し赤かった。
そこから何を話したのか、殆んど覚えていない。
『奢るよ』と言った先輩は、小洒落たイタリアンのお店に連れていってくれて、『大学合格おめでとう』ってお祝いしてくれた。それは覚えている。
そこからの記憶は曖昧だ。
武田ホニャララさんに、大学の事とか、サークルの事とか、当たり障りのない事を質問した気がするし、ちゃんと笑顔で話していた気もする。
帰り際にも、武田ホニャララさんは、
「すっかり花音ちゃんと仲良くなれた気がする!今度は大学で会いましょうね!」
と笑顔で私に手を振っていたのだから、私はちゃんと先輩の『可愛い後輩』を演じていられたのだと思う。…無意識だけど。
先輩も、
「何でも、優羽に頼れば良いよ!こいつ、面倒見が良いから」
って言ってたな。…そうか『こいつ』ね。
これって私、失恋決定じゃない?
え?これって私の知ってる乙女ゲームで合ってます!?
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