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思わぬ好機
しおりを挟む先生からの嫌味を右から左へと受け流した私は、推薦で大学に合格した。
森田と同じ大学にしたのは、あれから良く考えて、面白そうな大学だと思った事と、とても綺麗な学生寮があった事だ。
一人暮らしがしたいわけじゃない私には、これが大きな決め手となった。
一人暮らしの自由さよりも、楽チンな不自由さを選んだ結果だ。
学生寮は食事もついているし、セキュリティも万全だ。門限があっても、何も問題はない。
推薦で決まった者は、この時期、お気楽である。
周りの皆が受験勉強でゾンビのようになっている中、そんな事はお構い無しに、
「カラオケ行く~?」
とか言っちゃって、ゾンビ化したクラスメートに凄い目で睨まれていた。
私も大学進学には憂いはなくなったが、なんせ、先輩との関係の進展の無さに、憂いっぱなしだ。
カラオケなんて…先輩と行ってみたい!
と思いながらも、お気楽な友人と共にカラオケに行ったり、カフェでまったり過ごす日々だ。
これではゲームを攻略出来ない。
一方、森田は受験生だ。
彼も生徒会長をしていたし、内申点はばっちりだが、学部の関係で、推薦入試ではなく一般入試。
なので、ゾンビだ。
クラスメートと遊びに行く私に、
「お前は本当に、お気楽で良いな」
と恨みがましく言っても、私にはどうする事も出来ない。
謝った所で彼の気も晴れないだろうから、
「そうだね」
と言うに留めているのだが、その答えもまた、彼の神経を逆撫でるようだ。
人付き合いとは何とも難しいものだ。
そんななか、何と先輩からメッセージが届いた。
大学進学についてだ。
私は推薦で大学が決まった事を伝えたら、先輩から、
『じゃあ、お祝いしなくちゃな。何か奢るよ。何が良い?』
という返信が来た。
…これって、もしかして、デートのお誘い?もちろん2人でだよね?
ここにきて、先輩との進展が望める展開になってきたんじゃない?!
私に、この好機を逃す手はない。
私は早速先輩に『是非!』と返信し、メッセージを送ったばかりのスマホを胸に抱き締めた。
そして、思い出した。
友達が気のある相手には、直ぐに返信しないと言っていた事を。
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