乙女ゲームに転生しましたが、パラ上げで心が折れそうです。

初瀬 叶

文字の大きさ
上 下
38 / 43

森田と大学

しおりを挟む

先生から貰った大学の資料を読み更ける。

家から通える距離で就職に有利な資格が取れそうな学部のある大学を選ぼうと考えていると、
私が教室の机に広げた資料に影が落ちる。

私が顔を上げると、そこには森田が居た。

「何?なんか用事?」
と私が森田に訊ねると、

「お前、大学どこにすんの?」
と質問を質問で返された。

私は机に広げた様々な大学の資料に目線をやると、

「この中のどこか……かな?」
と私は答えた。

「花音…大学選びが適当過ぎないか?」
そう言われても…本当に今のところ、希望はないのだ。

「う~ん。でも、今、ちゃんと悩んでるよ?」
と私が言うと、

「じゃあ、此処にしろよ」
と、ある大学の資料を摘まみ上げて森田が言う。

「なんで?」
と私が訊くと、

「俺がこの大学を受ける予定だから」
と森田は答えた。

それこそ私は、

「なんで?」
と口に出していた。

「なんでって?どうして俺がこの大学受けるかって事?」

「いや、違う。どうして私が、森田と同じ大学に行かなきゃいけないのよ」

「別にいいじゃん。悩んでるなら、友達と同じ大学に行くっていうのも、1つの手だろ?」

…友達ねぇ…。

「でも、この大学だと、家から通うの厳しくなりそうだもん」

「…一人暮らししたいとかの願望ないの?」

「ないなぁ。今の暮らしに満足してるし」

転生前の自分は一人暮らしだった。その反動か、今の誰かにお世話される生活に甘えきっている私は、家事能力が著しく低下していた。

「ふーん。俺は一人暮らししてみたいんだよなぁ」
森田が一人暮らししようと、するまいと私にはどうでも良いし、興味もない。

「森田って、家事出来るの?料理とか、洗濯、掃除…ゴミの分別も自分でやらなきゃダメなんだよ?」

「今は出来ないけど、必要に迫られればなんとかなんだろ?」
…こいつ家事舐めてんのかな?

一人暮らしをしてみたら、自分の親の有り難みを嫌でも思い知るだろう。
転生前の私がそうだったように。

まぁ、森田が受験するとか関係なく、この大学は面白そうではあった。学部も目新しい物が多い。
校舎も新しくて綺麗だし、学食も充実してる。
…考えてみても良いかな。
私はそう思い、森田が摘まみ上げた資料にもう1度目を通した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

魅了の魔法を使っているのは義妹のほうでした・完

瀬名 翠
恋愛
”魅了の魔法”を使っている悪女として国外追放されるアンネリーゼ。実際は義妹・ビアンカのしわざであり、アンネリーゼは潔白であった。断罪後、親しくしていた、隣国・魔法王国出身の後輩に、声をかけられ、連れ去られ。 夢も叶えて恋も叶える、絶世の美女の話。 *五話でさくっと読めます。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

あなたを忘れる魔法があれば

美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。 ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。 私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――? これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような?? R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】 乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。 ※他サイトでも投稿中

処理中です...