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森田と大学
しおりを挟む先生から貰った大学の資料を読み更ける。
家から通える距離で就職に有利な資格が取れそうな学部のある大学を選ぼうと考えていると、
私が教室の机に広げた資料に影が落ちる。
私が顔を上げると、そこには森田が居た。
「何?なんか用事?」
と私が森田に訊ねると、
「お前、大学どこにすんの?」
と質問を質問で返された。
私は机に広げた様々な大学の資料に目線をやると、
「この中のどこか……かな?」
と私は答えた。
「花音…大学選びが適当過ぎないか?」
そう言われても…本当に今のところ、希望はないのだ。
「う~ん。でも、今、ちゃんと悩んでるよ?」
と私が言うと、
「じゃあ、此処にしろよ」
と、ある大学の資料を摘まみ上げて森田が言う。
「なんで?」
と私が訊くと、
「俺がこの大学を受ける予定だから」
と森田は答えた。
それこそ私は、
「なんで?」
と口に出していた。
「なんでって?どうして俺がこの大学受けるかって事?」
「いや、違う。どうして私が、森田と同じ大学に行かなきゃいけないのよ」
「別にいいじゃん。悩んでるなら、友達と同じ大学に行くっていうのも、1つの手だろ?」
…友達ねぇ…。
「でも、この大学だと、家から通うの厳しくなりそうだもん」
「…一人暮らししたいとかの願望ないの?」
「ないなぁ。今の暮らしに満足してるし」
転生前の自分は一人暮らしだった。その反動か、今の誰かにお世話される生活に甘えきっている私は、家事能力が著しく低下していた。
「ふーん。俺は一人暮らししてみたいんだよなぁ」
森田が一人暮らししようと、するまいと私にはどうでも良いし、興味もない。
「森田って、家事出来るの?料理とか、洗濯、掃除…ゴミの分別も自分でやらなきゃダメなんだよ?」
「今は出来ないけど、必要に迫られればなんとかなんだろ?」
…こいつ家事舐めてんのかな?
一人暮らしをしてみたら、自分の親の有り難みを嫌でも思い知るだろう。
転生前の私がそうだったように。
まぁ、森田が受験するとか関係なく、この大学は面白そうではあった。学部も目新しい物が多い。
校舎も新しくて綺麗だし、学食も充実してる。
…考えてみても良いかな。
私はそう思い、森田が摘まみ上げた資料にもう1度目を通した。
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