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進路相談
しおりを挟む希望通り医学部に入った先輩は、大学生活を楽しんでいるようだ。
辛うじて、なんとかメッセージのやり取りは復活した。
しかし、私から会いたい とは中々言えずにいる。
私は3年生になり、爽太君ともクラスは別れ、担任も夏目先生じゃなくなった。
間違いなく、本郷先輩ルートに入っていると思うのに、思うようにはいかない。
そして、何故か森田とはまた同じクラスだ。モブなのに…いやモブだからか?
『AKARI』からのメッセージも途切れがちになり、私はいよいよ不安になる。
そんな中、今日は進路希望の用紙を担任に提出する日だ。
私は今だ、パラ上げに苦心していた。
今の自分が、どの程度のパラメーターの達成率なのか?それを推し測る術はない。
そんな自分に受験勉強が更に重くのし掛かるリスクは回避したい。
しかし、卒業後、この世界がどうなるのかわからないからには、自分が死ぬまでこの世界に居る事を仮定して動かなければ、ただの穀潰しになる未来が待っている。
3年の担任は豊田先生だ。そう、紛う事なきモブである。
「で、坂崎。この進路希望の紙なんだがな…これは本心か?」
「はい」
「じゃあ、お前はここに書いてある通り『今の学力で行ける大学に推薦で』っていうこのふざけた進路で良いんだな?」
…ふざけた?私は全くもってふざけてなどいない。大真面目だ。
「ふざけてなどいませんけど?」
「いや、普通な?こういう事を学びたいから、その学部に行きたいとか、こんな職業に就きたいから、この専門学校に行きたいとかな?具体的な目標とかを、嘘でも書くんだよ」
「え?嘘でも?」
「そうだ。お前みたいに馬鹿正直に『とりあえず大学には行きたいけど、受験勉強したくない』っては書かないもんだ。
じゃなきゃ、俺ら教師もどうやってお前にアドバイスしたら良いかわかんないじゃないか」
…そうか、そうだよな。転生前はそうやって大学なり、学部なりを決めた。
そう、普通に。
しかし、今の私の正直な気持ちは『なるべく楽をして、どこかの大学に行く』だ。
学費に関しては、あまり心配しなくて良いと言われているし、私の今の成績だったら、めちゃくちゃ偏差値の低い大学を薦められたりはしないだろう。
「でも、お前もなんかやりたい事とかあるだろう?
別に大学行くだけが人生じゃないぞ?
進学校の教師である俺が言う事じゃないかもしれんが…」
…豊田先生って、良い意味で教師らしくないって言うか…近所のお兄ちゃんって感じで、親しみやすいな…モブなのに。
「じゃあ、先生。今の私が推薦で行ける大学の候補だけでも教えて下さい。
その中に自分が興味のある学部や学校がなかったら、また考えてみます」
…あくまでも、私は受験勉強をしたくない。
はっきり行って受験勉強なんて、転生前の1回で十分だ。
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