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卒業式
しおりを挟むいよいよ、3年生が卒業する。
私はこれまで以上に本郷先輩と偶然会う事は無くなるだろう。
いや、皆無と言っても良い。
今日、ここである程度、私の思いを伝えた方が良いのではないか…私は少し焦っていた。
何故なら、受験勉強で忙しい先輩の事を考えて、メッセージを送らないようにしていたら、なんと、この1ヶ月、全くやり取りをしていない事に気づいたからだ。
よくよく考えると、それまでも、私の方がメッセージを送って、それに先輩が返信をくれるといった事が常で、時に先輩からメッセージが届くといった具合だった。
割合にして9:1くらいだろうか。
なんだか、このままだと、自然とフェードアウトしてしまいそうな予感がする。私は悩んでいた。
しかし、受験を控えた先輩に、私の好意を伝えても良いのか…そこが問題だ。
卒業式を終え3年生達は晴れ晴れとした顔で、校門を出ていった。
…結局、私は本郷先輩に声を掛ける事が出来なかった。
何故なら、本郷先輩は式の途中で退出してしまったから。
先輩のお祖父様の容態が悪いらしく、急いで病院に向かったらしい。
このお祖父様…先輩のお母様のお父様に当たる人物が、お医者様で、先輩の理想なのだそうだ。
これは、私が卒業式の後に、先輩から貰ったメッセージに書かれてあった。
お祖父様はなんとか小康状態を保っているものの、意識はすでに無いらしい。
私はそうなっても、人間最後まで耳は聞こえるみたいな話を思い出した為、先輩に、
『最後まで耳元で話しかけてあげて下さいね。そして医学部合格の報告がお祖父様に出来ると良いですね。』と返信する事で精一杯だった。
こんな時に惚れた腫れたなどと伝える事は出来ない。
私も、それぐらいの空気は読める。
それから、少しして、先輩から、医学部合格の報告があった。
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