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噂の彼女

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楽しかった修学旅行も終わり、あとは期末試験に向けての勉強が始まる。

…とその前に私には重要な任務がある。
そう、本郷先輩にお土産を手渡すというミッションだ。

この件に関しては、大義名分があるため、堂々と先輩のクラスへ訪ねて行く事が出来る。
いつものようにストーキングをする必要はない。

昼休み、私はいそいそと先輩のクラスを目指した。
廊下の窓からそっとクラスの中を覗く。
先輩は…っと居た!と思ったその時、
綺麗な女子生徒が先輩に近づいて肩を叩く。
振り返った先輩はその女子生徒を嬉しそうな顔で見つめる。
2人は二言、三言言葉を交わすと楽しそうに笑い合った。
2人の声は聞こえないしどんな会話をしたかもわからない。
でも先輩の笑顔は、今まで私が見たどんな笑顔よりも素敵だった。
居たたまれなくなった私は、その場を走り去った。

どこをどう走ったかは、わからないけれど私はいつの間にか生徒会室に居た。
教室に戻る気にもならなかったし、かといってこんな早くに帰ったら、江梨子さんに心配をかけてしまう。

私は渡せなかったお土産を前に、途方に暮れていた。

(こんなの、ゲームにあったっけ?ライバル設定?ネタバレにもそんなの書いてなかった!)

必死にゲームを思い出そうとするけど、考えが纏まらない。

自分が攻略に必要な所しか読んでない上に、『まぁ、ゲーム始めたら攻略サイト見ながらすればいいよね』なんて、ゲーム道に反した私の行いのせいだと思うと自己嫌悪に陥りそうだ。
こんないい加減な輩が、製作者が心血を注いだゲームに転生したのがそもそもの間違いだ。

神様!どうして私はこのゲームに転生したんでしょうか?
確かに、このゲームは絵師さんも声優さんも人気で、シリーズ化される程だったけれど、面倒臭がりの私にはパラ上げが出来なかったし、推しキャラだって、他のゲームの方が夢中になる推しがいた。
そっちのゲームならちゃんと攻略したのに…サイト見ながらだけど…。

私が項垂れてると生徒会室の扉が開いた。そこに立って居たのは森田だ。

「花音、こんな所でどうした?午後の授業に出てないからびっくりしたぞ」
…森田は少し息が上がっているようだ。ひょっとして探してくれたのかな?

「森田くんこそ、授業出なくていいの?」

「先生が途中で腹痛起こして自習になった」
「そっか…。良く私が此処にいるってわかったね」

「ん?まぁ…なんとなくな」

そう言って私の座る椅子の前に机を挟んで座る。

「これ…渉先輩へのお土産じゃねーの?」
森田が机の上に置いたお土産を指さす。

「そうだけど…。渡しそびれちゃった」

「…何でって聞いても良いか?」

「先輩の教室に行ったんだけど…他の…人と話してたから、お邪魔しちゃ悪いかなって思って」

「だったら、後でまた行けばいいだろ?
こんな所で隠れる必要なくないか?」

「………先輩って彼女とかいるのかな?」

「あ~。なるほどね。戸川先輩の事か?」

「戸川先輩?」

「ああ。戸川 梓先輩。渉先輩の彼女って噂されてる人だよ」

私は目を見開いた。
え?このゲームって彼女居る人から略奪しちゃうシナリオとかあったっけ?
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