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文化祭・その①

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もうすぐ文化祭がやってくる。
私のクラスは執事カフェ。何それ?

なんか、クラスの男子が執事の格好で、もてなすらしいのだが、それって、執事の仕事?メイドの仕事じゃない?

でも、うちにはメインヒーローの長谷川くんがいるからな。
大盛況になる事は間違いないだろう。

きっと、長谷川くんルートを攻略するなら、このイベントは大事なんだろうな。
まぁ、今の私には関係ないけど。


とにかく、文化祭の準備は、生徒会も忙しい。
学校から帰ると、疲れ果ててしまっているので、全然パラ上げが出来ない。
宿題やるので、手一杯。

今の私の状況、非常に不味いのではないだろうか?
そう焦るものの、打開策はない。



「なぁ、花音。1年C組が暗幕使いたいってさ、手配出来る?」

「はぁ?!なんで今言うかな?
もっと早くに申請書出てたんじゃないの?」

「いや、提出し忘れてたんだって、副会長が泣きつかれたらしいよ。
んで、俺の所に頼みに来たと」

もう1人の副会長、1年生の福本くんは、優しいが、お人好しだ。
断れない人だとわかってて、泣きついたな!おのれ1年C組!

「森田くんが頼まれたなら、森田くんが手配したらいいじゃん。」

「俺、今、2年B組の舞台装置の事で、手一杯なんだよ。
ごめん!花音、頼む!」
大げさに手を合わせる森田くんを睨む。

「暗幕、他のクラスが使ってるよ。ちゃんと申請書の提出守ったクラスが優先だもん」

「そこをなんとか!」
なんとかって、なんだよ!


「……分かった。ちょっと他に使える暗幕ないか、探してみる」
私は溜め息とともに、答える。

「ありがとう!愛してる!花音!」
……全然、嬉しくない。




こうやって、毎日が忙しく過ぎていった。

いよいよ、明日は文化祭当日。…だと言うのに

「え?執事の衣装、1つダメにしたの?」

何故か自分のクラスでも、問題が持ち上がる。

「そうなの!最後の仕上げにアイロンかけてたら、焦げちゃって!」

「どこ?どこの部分?」

「ズボンの裾の部分なんだけど…」

「…じゃあ、裾切って詰めちゃう?丈が短くなっちゃうけど…」

「これ着るの、今野くんの予定だったんだけど…」

今野くんはうちのクラスでは、やや小柄な方ではあるが、裾上げすると流石に短くなりすぎるだろう

「じゃあ、女子に1人、執事になってもらおうよ!1人ぐらい男装したって可愛いよ」
私はグッドアイデアだと思って、提案してみる。

「当日、女子は裏方でカフェの軽食と、お菓子、ドリンクの担当で、手一杯だよ?」

「いや、全員でやる必要ないよね?1人ぐらい出来る人いるよね?」

「………」

なんで、誰もやりたがらないの?

「ねぇ、花音やってよ!花音、生徒会だから、クラスでは担当ないでしょ?」

いやいや、生徒会で忙しいから、担当外してもらってんじゃん!
そんなの森田くんだって、同じじゃん!

「無理だよ。当日も生徒会で忙しいもん。ごめん。他に誰かいない?」

「…………」

いや、だからさ、なんで、誰もやらないの?(2回目)

「花音、お前やってやれよ。
当日は生徒会の仕事はいいからさ」

おい!くそ森田!横から、なんて面倒くさい提案をしてくれてんだ。

「そんなの申し訳ないよ。」

暗に、嫌だと告げる

「大丈夫!今まで、花音が頑張ってくれたおかげで、当日はそんなにやる事ないよ。なんかあったら、俺が代わりにやるから。な!」

な!じゃねーよ。森田!

「…………わかりました」

「ありがとう!花音!」

アイロンで焦がした女子が涙目で私にお礼を言う。
涙目になるぐらいなら、あなたがやったら?と言いたい。

「悪りーな。坂崎」
…今野くんが謝る事ではない。

「じゃあ、今野くんは、受付ね。受付なら、制服でOKだから」

「よし!なんとか纏まったな!」
…森田。覚えとけよ

そして、私はそれから、執事としての振る舞いを長谷川くんに習う事になった。



「坂崎さん。生徒会で忙しい上に、こんなこと頼んでごめんね。」

「…自分のクラスの事だし、このカフェについては、全然やってない事、少し申し訳なく思ってたから」

少しな!少し。ほんの少し。

「いや、あれだけ忙しいんだ。
クラスは人数がたくさんいるんだから、俺たちがやるのが当たり前だよ。
森田も坂崎さんに頼りっぱなしだよね」

あ、そうか。2人は同じバスケ部だ。

「…まぁ、同じクラスだし、頼みやすい雰囲気ではあるから。諦めてる」

「なんか、ごめんね?」

「長谷川くんが謝る事じゃないよ。で、カフェなんだけど、お客さんが来たら『おかえりなさいませ、お嬢様』で良いわけ?」

「うん。そう言う事になってる」

「男子が来た場合は?」

「まぁ、男子の来店はあんまり期待してないけど、その時は『おかえりなさいませ、お坊っちゃま』で」

「…執事のコンセプトって、これで合ってるの?」

「俺に聞かないで。正解はわからないから」

そりゃそうだ。長谷川くんは執事じゃないもんな。
困ったように笑う顔が可愛いな。
さすがメインヒーロー。無駄に顔が良い。

「OK!まぁ、なるようになるでしょ」

元来の私が出てしまった。

「坂崎さんって、転校して来た当初は、少し大人しい感じなのかと思ってた。
なんか、生徒会に入ってから変わったね。ていうか、こっちが素?」

原因は森田ね、完全に。

「まぁ、どちらかと言えばこっちが素?
でも、当初も猫被ってたわけじゃないよ。馴れてきただけ」

「そっか。俺は今の方が話しやすいな」

これって、長谷川くんルートのイベントなのかな?

でも、長谷川くんルートでは生徒会には入らないから、こんな会話はしないよね?

私は意図せず、長谷川くんと交流を持つことになった。
まぁ、文化祭の間だけだろうけど。

「もし、困った事があったら、俺がフォローに入るから、坂崎さんは、無理しないでね」

フォローするって言う奴は信用出来ない。それも、森田が原因だけど。
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